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  • 交通事故の損害賠償請求で忘れがちなものや知られていないもの
  • 交通事故の損害賠償請求で忘れがちなものや知られていないもの
    ほっかい法律事務所
    堀江 健太

    交通事故に遭った際には様々な損害が発生します。代表的なものは物損であれば車の修理費、人身損害であれば治療費や慰謝料などです。

    しかし、一部の損害については、請求を忘れがちだったり、そもそも請求出来ることを知らなかったりすることで、実は損をしてしまっている方も多くいらっしゃいます。

    そこで、今回は交通事故で忘れがちな請求と、意外と知られていない未修理・修理予定のない事故車両の損害請求についてのお話です。

    交通事故で忘れがちな4つの損害の請求

    交通事故では次の4つの損害について請求を忘れてしまう方が多いです。
    1つずつ詳しく見ていきましょう。

    1・入院雑費

    事故で怪我をして入院するということになった場合、治療そのものにかかる費用の他に様々な費用がかかります。

    たとえば、備え付けのテレビや冷蔵庫を使うのに料金がかかることがありますし、寝間着を借りるのにも1日何十円とかかります。

    そういった費用が細々とかかるので、1日いくらと決められた額が損害として認められます。

    この1日いくらという金額ですが、保険会社が主張する額と裁判所が認定する額とが異なっています。

    具体的には保険会社は1日1,100円もあれば十分と主張し、裁判所は1日1,500円くらい必要だろうと認定します。

    弁護士が間に入って保険会社に請求する時はもちろん1日1,500円で請求します。

    裁判所が認定する以上、それが法律的に正しい損害額のはずなのですが、保険会社は1,100円という基準を改めようとしません。

    言い方は悪いですが、被害者の無知につけ込んで、低い金額で示談しているという風に私としては見えてしまいます。

    2・付添看護料について

    これは、たとえば子供が怪我をして親が仕事を休んで入院や通院に付き添った場合であり、これも損害として認められます。

    細かい話をすると、「これって被害者自身の損害ではないのでは?」「専業主婦で仕事をしていなかったり仕事に合間に付き添った場合は損害は発生しないのでは?」などの疑問があるのですが、そういったことは抜きにして一律に損害として認めましょうということになっています。

    金額ですが、入院の場合で1日6,000円程度、通院の場合で1回3,000円程度が認められます。

    先ほど説明した入院雑費はこちらから請求しなくても、通常保険会社は金額の多い少ないはさておき、支払項目の中にきちんと入れていきます。

     

    しかし、この付添看護料については、こちらから請求する前は支払項目に載ってないということも珍しくありません。

    そして、この付添看護料も入院雑費と一緒で、保険会社が支払いますよと言ってくる額は裁判所が認定する損害額の3分の2くらいの金額です。

    ちなみに、家族が入院や通院に付き添えば必ず認められるというものではありません。

    被害者が一人では病院に行けない高齢者や小学生以下だったり、成人の方でも怪我の程度が重くて、付き添いがないと入院や通院が困難であるという状況であることが必要ですので、ご注意下さい。

    3・買い替え諸費用

    こちらに全く過失が無い場合でも修理代が全額支払われない場合があります。
    それは修理代が事故に遭う前の車の時価額を上回る場合です。

    たとえば新車登録から5年くらい経った軽自動車に乗っていて、同じ程度の年数・走行距離の中古車が50万円くらいするとします。

    それに対し事故による修理代は80万円かかるという場合、同じ程度の車が50万円なのに加害者は80万円を払わなければならないのか、という問題があります。

    法律的には修理代の80万円ではなく車の時価額である50万円を賠償すれば良いということになります。

    こういったことは結構あります。特に年式が古い車だと、軽微な事故でない限り時価額より修理代の方が高くなることが多いです。

     

    さて、保険会社はこうした場合車の時価額がこれこれだからいくら支払いますという話をしてくるわけですが、当然その場合被害者としては車を廃車にして新しい車を買うということになります。

    問題は車の時価額が賠償されれば、そのお金だけで新しい車が手に入るのかということで、当然ですが、そうはなりません。

    なぜかというと車を買う時には消費税や自動車取得税やなどの税金がかかりますし、また検査や登録などの手続費用もかかります。

    このような買い替えにかかる諸費用は損害として当然請求できるのですが、忘れられがちなので注意して下さい。

     

    これについては保険会社の方から支払うと言ってくることはほぼ100%ありません。また、こちらから請求してもなかなか払おうとしないのが実情です。

    もし、弁護士費用特約という弁護士に依頼する費用がカバーされる特約を付けているなら、弁護士に依頼して交渉をしてもらった方が楽です。

    最近は選ばなくても標準で付いていたりするので、ぜひご自身の保険をチェックしてみて下さい。

    4・評価損

    これも保険会社はまず認めない損害の一つで、事故によって車の価値が落ちたことを損害とするものです。

    たとえば車が納車されて1週間で大きな修理を必要とするような事故にあったとします。

    きちんと修理されたとしても一度事故に遭った車になんか乗りたくないということで修理された車を手放した場合、事故前の車と事故後修理された車は同じ価値でしょうか。

    ここは考え方の別れるところで、きちんと修理されているのであれば価値は同じだという考え方もあれば、そうじゃないという考え方もあります。

     

    ただ、中古車を買ったことのある方であればご存じかもしれませんが、中古車を販売する場合には必ず「修復歴」があるかどうかを表示しなければならないことになっています。

    購入する側からすれば、他の条件が全く同じであれば修復歴が有る車よりは修復歴が無い車を当然選ぶことになるので、修復歴が有る車は価格が下がります。

    ですので、やはりきちんと修理されていたとしても価値は下がるというのが常識に沿った考え方だと思います。

     

    この評価損については裁判でよく争われていて、認められない場合も結構あります。

    先ほどの例のような場合だとあまり問題ないですが、購入からある程度経った車だったり、元々の価格が安い車だったりすると修復歴の有り無しによってそれほど買取価格は変わらないためです。

    交通事故車両で未修理・修理予定がない場合の修理費の損害請求

    意外と知らない人が多い交通事故の請求に、未修理・修理予定がない場合の車両の賠償請求があります。

    交通事故によって車両が損傷した場合、修理が可能であれば、その修理費は必要かつ相当な範囲で車両所有者に生じた損害と認められ、未修理・修理予定がない場合でも事故加害者に対して賠償請求をすることができるのです。

    賠償請求は未修理・修理予定がなくてもできる

    この修理費相当額の損害については、車両の所有者が実際に車両の修理を依頼して修理費用を支出した場合だけでなく、未修理の場合や修理予定がない場合であっても、交通事故によって現実に車両が損傷を受けていれば、損害が既に発生しているものとして賠償請求をすることが可能と解されます。

    (未修理・修理予定のない車両についての修理費用を損害と認めた裁判例として、大阪地方裁判所平成10年2月24日判決自保ジャーナル1261号2頁)

     

    損害請求は見積書に記載の修理費用が相当であるかどうかが重要

    未修理・修理予定のない車両について修理費相当額の損害賠償請求をする場合には、修理工場が作成した修理費用の見積書等に基づいて修理費用相当額を算定し請求することになります。

    この場合、見積書の金額が相当であるかどうかが問題となり、実際に修理がなされ修理費が支払われている場合と比べ、損害額(見積書の金額)について保険会社との間で争いになることが多いです。

    裁判においても、未修理・修理予定がない場合には、見積書の金額の相当性が慎重に判断されることになります。

    例えば、原告側が100万円の修理見積もりを証拠として提出したのに対して、被告側から反対の証拠として70万円の修理見積書が提出されたような場合には、被告側の反証が成功したものとして、修理費相当額は70万円であると判断される可能性が大きいものと考えられます。(加藤新太郎「物損交通事故訴訟における要件事実と実務」市民と法81号2頁以下参照)

    したがって、未修理・修理予定のない車両について修理費相当額の損害賠償請求をする場合には、修理済み車両の修理費を請求する場合に比べて、修理工場の作成した見積書に記載された修理が車両の損傷状況に照らして必要かつ相当な範囲のものであるか、修理費用が相当な額であるかなどの点に特に留意が必要となるのです。

    交通事故による損害請求でお悩みの方は当事務所にご相談ください!

    今回は、忘れがちな損害請求や、未修理・修理予定がない交通事故車両の損害請求についてお話しました。

    当事務所では損害請求や車両損害以外の交通事故による各種ご相談も承っております。

     

    車両損害を含む交通事故の問題については当事務所の交通事故無料電話・メール相談にてご相談ください。