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  • 相続放棄について
    堀江・大崎・綱森法律事務所
    横山 尚幸

    相続は,人の死亡によって開始し(民法882条),相続人は,相続開始の瞬間から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を当然かつ包括的に承継することになります(法896条)。
    もっとも,相続人は,自分が相続人となる相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月間は,相続の単純承認,限定承認又は相続放棄を選択することができるとされています(法915条)。

    このうち今回取上げるのは,相続放棄についてです。
    相続放棄を行うと,初めから相続人とならなかったという効果が生じます(法938条)。
    被相続人が多額の債務を負っていた場合に選択されることが多い手続となります。

    相続放棄をするためには,相続放棄する旨を家庭裁判所に申述する必要があります(法939条)。相続放棄申述書(書式は,各地の裁判所のホームページにあることが多いです(札幌家裁書式例)。)を家庭裁判所(被相続人の最後の住所地の家庭裁判所)に提出することになります。

    家庭裁判所は,これを受けて,相続放棄の申述受理・不受理の審判を行います。
    具体的には,家庭裁判所は,①申述が法定の方式によりなされているか,②申述人が推定相続人又はその法定代理人であるか,③相続放棄の申述が真意に基づくものであるか,④熟慮期間内になされているか,⑤法定単純承認の事由がないかを確認します(問題になりやすいのは④⑤)。

    では,家庭裁判所が申述を相当と判断し,受理の審判を下した場合,相続人は,絶対に被相続人の被相続人の債務を返済しなくて済むといえるのでしょうか?

    結論は,否です。
    相続放棄受理の審判は,相続人の相続放棄の意思表示を公証するにすぎず,上記実体要件を備えていることを確定させるものではないからです(誤解されがちなところです)。
    そのため,被相続人の債権者は,相続人に対し,被相続人が負っていた債務を訴訟で請求し,訴訟の中で相続放棄の効力を争うことができます。
    一方,審理の結果,申述を不相当と判断した場合,家庭裁判所は,申述却下審判をします。却下審判に対しては,即時抗告をすることができます(家事事件手続法201条9項3号)。しかし,却下審判が確定した場合,基本的には,相続放棄を主張することができなくなり,相続人は,自己固有の財産からも債務を返済しなければならなくなります。

    すなわち,相続放棄受理の審判を行っても,債権者は,改めて訴訟にてその効力を争うことができる一方,却下審判が確定した場合には,相続人は固有の財産からも借金等の返済を迫られ,回復しがたい損害を被ることになるということです。

    そのため,実務では,相続放棄の申述について,明らかに要件を欠くと認められない場合には,受理することが相当であるとされております。

    相続放棄の申述を自分で行う方が多いのは,そのためでしょう。
    弁護士が代理人となる必要性が高い場面は,申述が不相当とされた場合の即時抗告や相続放棄の効果を争いたい債権者の立場が多いかと思います。

    特に,④熟慮期間内になされているか,⑤法定単純承認の事由がないかという点が争いになる場合には,専門的知識が必要かと思います。お困りの際には,当事務所の遺産相続無料相談をご活用下さい。