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  • 相続人不存在の場合、相続債権者等は、どのように支払を受けることができるか
  • 相続人不存在の場合、相続債権者等は、どのように支払を受けることができるか
    堀江・大崎・綱森法律事務所
    横山 尚幸

    以前「相続放棄と相続放棄検討中の相続財産管理について」で相続放棄に関するテーマを取り上げました。

     

    では、相続人全員が相続放棄を行った場合等、相続人がいない場合、被相続人の債権者(相続債権者)等は、支払を受けることができないのでしょうか?

     

    今回は、誰も財産を相続する人がいない「相続人不存在」について、またその手続きや遺言の重要性について解説していきます。

     

    相続人不存在の場合

    民法「第五編 相続」の「第六章 相続人の不存在」には、次の規定が存在します。

     

    951条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
    952条1項 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。

     

    相続人がいることが明らかでないときに、相続財産自体を法人として扱う(951条)ことで、相続財産が誰のものでもなくなることを回避します。

    そして、相続財産管理人を選任(952条1項)ことで、円滑に管理・清算の手続を進めることができると解されております。

     

    この「相続人のあることが明らかでないとき」とは、相続人の存否が不明な場合をいいます。

    相続人の存在が戸籍上明らかでない場合の他、相続人全員が相続放棄をしたり、相続欠格・廃除により相続権を失ったりしている場合も相続人の不存在に該当します。

     

    一方、戸籍上相続人が一人でもいれば、「相続人のあることが明らかでないとき」にあたらず、仮に相続人が行方不明、生死不明の場合にも該当しないとされております。

    この場合には、相続財産管理人ではなく、不在者財産管理人の選任(民25条~)か失綜宣告(民30条~)の手続を経ることになります。

     

    相続人不存在の場合、どのような手続をとる必要があるか?

    被相続人に対して、利害関係を有していた方々(例えば,被相続人の債権者)は、相続財産から弁済等を受けることを期待します。

    相続人不存在の場合、被相続人の利害関係人は、どのような手続を経ると清算(弁済)を受けることができるでしょうか。

    手続きの流れを詳しく見ていきましょう。

     

    相続財産を清算するまでの流れ

    0、相続財産法人の成立(特別の手続は不要です。)

    先述した通り、相続人不存在の場合には、相続財産は法人化されます。

    この法人化された相続財産を「相続財産法人」と呼びます。

    特別の手続は不要で、「相続人のあることが明らかでないとき」は当然に相続財産法人が成立します。

     

    1、相続財産管理人の選任申し立て

    しかし、相続財産法人が成立しただけでは、被相続人に対して利害関係を有していた方々が期待する清算手続(弁済等)は始まりません。

    相続財産に関する清算手続が始まるには、相続財産管理人が選任される必要があります。相続財産管理人は、家庭裁判所が選任するため、利害関係人は、家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立をしなければなりません。

    相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てることができるのは、利害関係人または検察官に限られています。

     

    この利害関係人とは、相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者をいい、被相続人の債権者や債務者、被相続人から遺贈を受けた者、特別縁故者などがこれに該当するとされております。

     

    2、相続財産管理人に対する請求申出

    相続財産管理人は,相続財産・債務の調査を行い、相続財産の換価を行った後、相続債権者・受遺者に対して弁済等清算手続を行うことになります。

     

    相続財産管理人が選任されると、3度公告(官報に掲載されます)が行われます。

    ①相続財産管理人選任の公告
    ②相続債権者や受遺者に対する請求申出の公告(選任公告から約2ヶ月後)
    ③相続人捜索の公告(清算手続を経ても残余財産があると見込まれる場合に、6ヶ月以上の催告期間を定めて行われます。)

     

    相続債権者や受遺者は、②請求申出の公告・催告がなされた後、定められた期間内に請求申出をする必要があります。

    なお、相続財産管理人は、把握している相続積権者および受遺者に対しては、公告に加え、各別に請求申出すべきことを催告しなければならないとされており、知れたる相続債権者等は、書面にて請求申出の催告を受けることになると思われます。

     

    3、相続財産管理人による清算手続について

    相続財産の換価作業が終了した後、相続財産管理人は、法定の順序で弁済を行うことになります。

    担保等の優先権を有する債権者への支払がなされた後、一般の相続債権者に対して弁済がなされます。

     

    換価作業等によって形成された財産の額が、債務総額を上回っている場合には、各債権者に対して全額返済されることになりますが、下回っている場合には、各債権額の割合に応じた配当弁済が行われることになります。

    配当弁済が実施される際には、相続財産管理人が、各債権者に対して、事前に配当表等を送付し、配当弁済のニア用について同意を求めることが多いと思います。

    相続債権者は、相続財産管理人からの連絡を待って、適宜対応することとなります。

     

    以上が、相続債権者等が弁済を受けるために必要な手続の流れとなります。

    なお、上記①~③の公告を経ても相続人が現れなかった場合に、相続人不存在が確定することになり、相続人不存在が確定して初めて、特別縁故者の方が財産分与を申立てることができるようになります(相続人不存在が確定した後,3ヶ月以内の申立が必要)。

     

    上記、公告時期からわかるとおり、相続財産管理人が選任されて約10ヶ月経過しなければ、特別縁故者は財産分与審判を申立てることができないということです。

    相続人不存在が確定した後、特別縁故者による財産分与請求がなかった場合、また特別縁故者に財産分与を行っても残余財産がある場合は、財産は国庫へ引き継がれます。

     

    注意点:相続財産管理人を立てると費用が発生する

    相続財産管理人が選任されると、上記のような手続を行ってもらうことができますが、相続財産管理のための手続費用(印紙、郵券、公告費用、管理行為に必要な費用)や相続財産管理人への報酬等が発生します。

     

    申立人は、相続財産管理人選任申立時に上記手続費用・相続財産管理人報酬を見込んだ予納金を納めるよう求められることが多いです。

    相続財産を換価することで、手続費用や相続財産管理人の報酬が賄うことができるのであれば、予納金は申立人に返還され、申立人が手続費用や相続財産管理人報酬を負担することはなくなります。

     

    ですが、相続財産の価植がなかったり、極めて僅かであったりして、上記手続費用や相続財産管理人報酬を賄えない場合には、申立人が納めた予納金の中からこれらが支払われることとなります。

    相続財産を換価しても手続費用や相続財産管理人報酬すら賄えない可能性がある場合には、相続財産管理人選任を申立てるか否かを検討する必要があるということです。

     

    一方、消極財産しかない場合であっても、例えば、被相続人に登記義務がある場合には、相続財産法人を相手方として登記請求をなす必要があります。

    その場合は、相続財産管理人選任申立ての実益がありそうです。

     

    相続人不存在の手続き、まずは弁護士にご相談ください

    法定相続人がいないからと言って、すぐに「相続人不存在」になるわけではありません。

    相続財産管理人を立てて財産の弁済を行えば、その分費用もかかります。

    もし相続人不存在が確定し、特別縁故者も財産分与の申し立てをしなかった場合には、財産は国庫に引き継がれることになってしまいます。

     

    存続人の存否が明らかでなく、相続財産管理人選任の申立を行うべきか悩んだ際には、専門家へ相談するのが安心です。

    ぜひ当事務所の遺産相続無料相談をご活用下さい。