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  • 労働時間(残業時間)の計算に必要となる「証拠」とは?
  • 労働時間(残業時間)の計算に必要となる「証拠」とは?
    ほっかい法律事務所
    種田 紘志

    弁護士の種田です。

    以前、労働時間(残業時間)や残業代の基本については「残業代の基礎知識。問題になりやすい固定残業代とは?」で詳しくお話させていただきました。

    今回は、労働時間(残業時間)の計算に関するお話です。

    労働時間(残業時間)の計算で必要になる「証拠」となるものや、証拠がない場合の対応、また残業代の適用外となる「管理監督者」についてご説明していきます。

     

    労働時間に関する立証責任は労働者側にある

    労働時間の管理に関しては、使用者が行うべきものという通達が存在しますが、残業代を請求する場合、どれだけの時間労働していたのかというのは労働者側が立証しなくてはならないと考えられています。

     

    しかも本来的にはこの労働時間は1日ごとの労働時間を指します。

     

    ですので、残業代を計算する場合にどれだけ労働していたかについて、「記憶以外に証拠はない」という場合は、(会社が認めている場合は別ですが)請求できる可能性がぐっと低くなってしまいます。

     

    そのため、残業代請求について労働時間を示す「証拠」はとても重要な意味を持ってきます。

     

    労働時間(残業時間)を計算する際に「証拠」となるもの

    では、労働時間(残業時間)を計算する際に、どのようなものが「証拠」として必要になるのでしょうか?

     

    ■タイムカード

    実労働時間に関する証拠として一番イメージしやすいのは「タイムカード」であると思います。

    これが日々打刻されているものである場合、概ねこれに沿った認定がされる傾向にあると思われます。

     

    ■タイムカード以外の証拠

    タイムカードによって労働時間を管理していない場合には、次のようなものが証拠として利用することができます。

    ・業務日報
    ・シフト表
    ・社内メモ
    ・出退勤表
    ・入退館記録 など

     

    また、上記のような証拠がない場合には、(証拠としては強くないとの認定がされうるところではありますが)次のようなものも証拠になる場合があります。

    ・パソコンのログイン、ログアウト記録や社内メールの時間
    ・LINEの履歴
    ・交通電子マネーの使用履歴
    ・手書きメモ

     

    労働時間(残業時間)に関する証拠がない場合には?

    先程もご説明しましたが、労働時間は本来1日1日に関するものを立証しなくてはなりません。

     

    しかし、証拠の種類によっては、時間外労働(残業)はしていたと思われるが、具体的にどれだけの時間労働していたかわからない、という場合があります。(例えば、一定割合の期間は具体的な時間がわかったものの、残りの割合について具体的時間がわからない場合など)

     

    そういうような場合は一定割合の限度で認めるといったこともあります。(例えば具体的時間がわからない部分について、主張の半分の限度で認めるといったもの)

     

    「管理監督者」は残業時間があっても残業代の適用外?

    これまで残業時間や残業代についてお話してきましたが、時間外労働に対する割増賃金の法規制が適用されない、つまり残業代が出ない人がいます。

    残業時間があっても残業代がもらえない「管理監督者」とは

    法律上、「監督若しくは管理の地位にある者」(これを管理監督者と呼びます)に該当した場合、労基法上の労働時間・休憩・休日に関する規制が適用されないこととなります。
    ※深夜労働に関する規制は適用されます。

     

    したがって、これに該当する場合、時間外労働の割増賃金は受給できないこととなってしまいますので、影響は決して小さいものではありません。

     

    「管理監督者」かどうかの判断基準

    では、この管理監督者というのはどのような人を指すのでしょうか。

     

    労働時間の適用が及ばないという大きな影響が及ぶことからすると、単に管理者、あるいは監督者という名称だけで決まるものではありません。

    実態に即して、使用者に代わって労務管理等をする立場かといったことが判断されるべきものとなります。

     

    この点に関する裁判例では、次の3つが認められるのであれば、管理監督者に該当するという判断がなされています。

    ① 事業主の経営に関する決定に参加し、労務管理に関する指揮監督の権限があること

    ② 自己の労働時間(出退勤など)について裁量権を有していること

    ③ 一般の従業員と比較しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇が与えられていること

     

    これら一つを満たすから問題ないと言うことではなく、全てを満たすことが重要となります。

     

    労働時間(残業時間)の計算の疑問・悩みは弁護士へご相談を

    今回のお話のように、残業代計算に当たって証拠があるのかないのか、あるいは証拠がある場合にそれが証拠として十分か否かというのは、専門家である弁護士の目を通したうえで検討することが肝要です。

     

    また、「管理監督者」の要件は読んでいただいても判るとおり非常に抽象的な表現となっているため、実態に即してどのような判断がされる可能性があるのかという点もあるので、ご自身だけで判断なさるのではなく専門家による検討が必要となると思われます。

     

    「労働時間の証拠となるものは自分で書いたものしかないし・・・」「自分は監督者と言われているから残業代はもらえないのかな・・・」と諦めてしまう前に、まずは弁護士にご相談してみてはいかがでしょうか?

     

    当事務所でも、労働問題(労働者側)についての無料相談を行っておりますので、お困りの際は是非お気軽にご相談下さい。