ブログ

  •  > 
  •  > 
  • 自己破産で破産管財人が選任される場合の割合やその理由とは?
  • 自己破産で破産管財人が選任される場合の割合やその理由とは?
    ほっかい法律事務所
    堀江 健太

    自己破産手続においては、大半のケースでは同時廃止と言って、破産手続の開始と同時に破産手続を終了させる処理が行われます(破産法216条)。

    そして、破産手続の終了後は免責手続に移行し、よほどの問題が無い限りは免責が許可されます(借金が無くなります)。

     

    しかし、中には同時廃止ではなく、管財事件と言って破産管財人が選任され破産手続が進められる場合があります。

    破産管財人が選任される(管財事件となる)場合、破産管財人への報酬に充てるため裁判所に予納金として20万円を納めなければならないですし、約3ヶ月間、送られてくる郵便物が破産管財人のところに転送されてしまいますし、債権者集会にも出席しなければならないなど、様々な負担が発生します。

     

    そこで今回は、破産管財人が選任される(管財事件となる)のはどれくらいの割合なのか、どういう場合に破産管財人が選任される(管財事件となる)のかについて解説していきたいと思います。

     

    自己破産で破産管財人が選任される割合はどれくらい?

    出典は、札幌弁護士会と札幌地方裁判所との倒産実務協議会にて配布された資料になりますが、同時廃止を希望したにもかかわらず破産管財人が選任される管財事件となった件数・割合は以下のとおりです。

    平成25年 2,044件中150件(7.3%)
    平成26年 1,919件中190件(9.9%)
    平成27年 1,784件中208件(11.6%)

     

    特徴的なのは、自己破産(同時廃止での申立)の件数は減っているのに対し、管財事件とされる件数は増加している点です。

    平成27年で言えば、10件中1件以上は管財事件になっている計算です。

     

    どういう理由で破産管財人が選任されることが多いのか?

    破産管財人が選任される管財事件となった理由についても統計が取られているのですが、その年その年で波はあるものの、概ね以下の3つが理由となっています。

     

    ①一定以上の資産があってその処分を要するために管財事件になったものが約2割

    ②資産がある可能性があり、その調査を要するものとして管財事件になったものが約6割

    ③免責が相当かどうか調査を要するものとして管財事件になったものが約2割

     

    それぞれについて詳しく見ていきましょう。

    ①一定以上の資産があってその処分を要する場合

    破産事件は、若干不正確な表現ですが、分かりやすく言えば、資産の処分を行った上で、債権者への配当を行い、それでもなお残った債務(借金)が残った場合には、その債務は免除するというものですので、一定以上の資産がある場合は、破産管財人がその処分を行うことになります。

     

    一定以上の資産というのは、どの程度なのかというと、札幌地裁の基準では(2018年10月現在)現金以外の財産(預金・保険・車両・退職金(支給予定額の8分の1)など)で20万円を超えているものがあれば、一定以上の試算があるものとして管財事件となります。

     

    ですので、積み立てている生命保険の解約返戻金が20万円以上であったり、使っている車両の価値が20万円以上であったり、現在の勤務先を退職した場合に160万円(8分の1で20万円)以上でる予定の場合などは、管財事件になります。

     

    ②資産がある可能性があり、その調査を要する場合

    資産の中には、評価が難しいものもあります。

     

    たとえば、過去に知人にお金を100万円貸していて、その後何度督促しても1円も返してもらっていない場合、100万円の貸金という資産を持っているからといって、100万円を持っていることと同じように考えてよいでしょうか。

    到底回収できそうにない貸金であれば、資産価値は0円と評価することも可能ですが、債権者としては当然ながら本当に回収が不可能なのかどうかはきちんと確認してほしいはずです。

     

    そのため、このように評価の難しい資産がある場合、裁判所は破産管財人を選任して(管財事件にして)、調査をさせます。

     

    また、この場合に含まれることものとして、会社役員が破産する場合があります。

    会社役員の場合、調査の結果、資産の存在が判明することが珍しくないため、資産調査のため管財事件になることが多いです。

     

    ③免責が相当かどうか調査を要する場合

    たとえ資産がなかったとしても、破産に至った経緯に問題がある場合、免責(借金をチャラにする)することが相当なのかどうかを調査する必要が生じます。

    問題が軽微であれば、裁判所自身が調査を行うこともありますが、裁判所が破産管財人に調査させるべき事案だと判断すれば、管財事件となります。

     

    自己破産で破産管財人が選任された場合は弁護士にご相談を

    このように管財事件になる場合というのは、いくつかのパターンが有り、その判断はなかなか難しく、実際に破産申立してみないと分かりません。

    ただ、お聞きした事案の内容から管財事件になる可能性がどれくらいあるかということについては、これまでの経験を踏まえてご回答することが可能です。

     

    当事務所では債務整理の相談は無料で、面談のみならずメールや電話でも行っておりますので、ぜひお気軽にご利用下さい。

     

    ※破産法216条(破産手続開始の決定と同時にする破産手続廃止の決定)

    裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。