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  • 弁護士紹介サイトが解説する相続問題に関する弁護士の選び方のポイントとは?
  • 弁護士紹介サイトが解説する相続問題に関する弁護士の選び方のポイントとは?
    ほっかい法律事務所
    大崎 康二

    当事務所が遺産相続問題の取り扱いをホームページや電話帳で強めに打ち出しているためなのか、最近、相続問題に関する弁護士の紹介サイトを運営している会社から掲載の勧誘(営業)がよくくるようになっています。

    この種のサイトを見ていくと、相続問題に関する弁護士の選び方のポイントが解説されていて、相続問題を扱う弁護士としてなかなか興味深いのですが、選び方のポイントとしては、おおよそ以下の➀~➉に集約されるようです。

    ➀実績・経験・知識が豊か
    ➁熱意があり、研究を怠らない
    ➂相続税に詳しい
    ➃他業種との連携
    ➄費用が明確
    ➅立地が便利、時間の融通が利く
    ➆返信が早い、フットワーク軽い
    ➇話しやすく、質問しやすい
    ➈説明が丁寧
    ➉自分と合うと感じられる

    分類すると、➀~➃は弁護士の能力に関するもの、➄~➆は弁護士の利便性に関するもの、➇~➉が弁護士の人柄に関するものと整理することができそうです。

    ただ、これだけの多くのポイントがあると、どのポイントを重視して弁護士を選んだらよいのかがかえって難しくなるようにも思えます。今回は、弁護士の目から見て、それぞれのポイントをどう見るのかという点を雑感も交えながら書いていこうと思います。

     

    弁護士の能力に関する選び方のポイント

    ➀実績・経験・知識が豊か

    弁護士に依頼する以上は、できるだけ自分に有利に解決できることが重要ですので、弁護士選びのポイントとして、実績・経験・知識の豊かさが最上位に来るのは当然です。

    ただ、その見極めはなかなか難しいというのが現実なのかと思います。

    相続問題は多くの弁護士が取り扱う事件なので、弁護士としての登録年数が長ければ、おのずと一定の知識・経験は身についてくる事件と言えますが、逆に言えば、一定年数以上の経験のある弁護士の中では、知識・経験の差が出にくい事件という見方をすることもできます。

    実績については、現在はホームページ上で過去の実績を掲載している法律事務所もあるので(当事務所もブログ等で掲載しています)、それを参照するというのも一つの考え方です。すべての法律事務所がこのような情報発信をしているわけではないので、弁護士間の実績の比較まではできませんが、掲載されている内容の充実度というのは一つの目安になると思います。

    弁護士側からの情報発信が少ないため、弁護士を選ぶ際に知人に紹介を頼むという方法もあります。これはその知人が実際に相続問題に詳しい弁護士を知っているのであればよいのですが、たまたま懇意にしている弁護士を紹介してくれるということなのであれば、その弁護士が相続問題に詳しいという保証はありませんので、紹介してもらう際にはその点の確認が大事だと思います。

     

    ➁熱意があって、研究を怠らない

    これも実績・経験・知識が豊かという点と同じく、弁護士選びの際にはできれば重視したいところだということで、弁護士の紹介サイトでも弁護士選びのポイントとして挙げられているのだと思います。

    ただ、熱意や研究熱心さというのは、実績や経験以上に外からは見えにくいため、現実的には弁護士選びのポイントにはなりにくいのではないかと思います。

    実績と同じようにホームページで相続問題の解説を行っている点を重視して選ぶというのもありうるかもしれませんが、一般の方がホームページを見ただけで、その弁護士が自身の実績や経験に基づいてオリジナルに解説したものなのか、他のホームページや解説本などの記載内容を貼り合わせただけのものなのかを判断することは難しいため、弁護士の選び方としてはあまりお勧めできません。

     

    ➂相続税に詳しい

    弁護士の紹介サイトの中には、相続税に詳しいというポイントを挙げるところもあります。

    相続問題を考えていくときには、遺言書を作成するときも、遺産分割協議を行うときにも、相続後に発生する相続税の問題まで考える必要があります。

    弁護士として、相続税の問題も踏まえた解決の提案をしていくことは大事なことですが、実際に弁護士を選ぶ際に、相続税に詳しいことにポイントを置くべきかというと、個人的にはこの点は疑問に思っています。

    税理士としても登録している弁護士で、実際に税理士としての活動実績のある弁護士であれば別ですが、弁護士は税務に関しては専門家ではなく、身に着けられる知識としては、一般の方と何ら変わりがあるわけではありません。

    相続税の問題を考える上では、関係する通達はどのように解釈・運用されているのか、税務署はどのように判断し動いてくるのかといった点に関する知識や考察が不可欠であり、このレベルの責任を持った判断は税理士でなければできないというのが私の考えです。

    ですので、弁護士選びの際の基準としては、相続税に詳しいことを求めるのではなく、相続問題に詳しい税理士と連携できている点を求めるべきだと思います。

     

    ➃他業種との連携

    遺産分割などの相続の場面は、相続税のほかに、土地の評価方法について問題になることもあります。

    実際に遺産分割調停の中では、遺産に含まれる不動産の評価額が争いのポイントになることがあり、その解決として不動産鑑定士による不動産評価額の鑑定が行われることがあります。

    そのため、不動産の評価方法が争いになることが予めわかっている事件では、事前に不動産鑑定士の協力を得て方針を立てていくことが必要となることもあるのですが、そのためには、不動産鑑定士とのネットワークも必要となります。

    ➂で説明しました相続税に関する税理士との連携もそうですが、弁護士ができることの限界を自覚した上で、他業種の専門家と連携しながら、事件を進めていくということが事件を適切に解決していくポイントと思います。

    ホームページの中で連携している税理士や不動産鑑定士の有無まで紹介している法律事務所は少ないと思いますので、これは法律相談の際に弁護士に確認するのが一番だと思います。

     

    弁護士の利便性に関する選び方のポイント

    ➄費用が明確

    弁護士に依頼するに際しては、着手金、報酬金、日当などの弁護士費用がいくらになるのかという点が気になるところだと思います。

    ホームページ上で報酬基準や目安を掲載している法律事務所は多いと思いますが、なかなかそれを見ただけでは、必要となる弁護士費用の金額は把握しにくいかもしれません。

    実際の弁護士費用は、相談内容を具体的にお聞きした上で、その事件の困難さや必要となる労力などを考えて、ケースごとに異なる金額を決めていくことになりますので、ホームページに掲載できるのはあくまで目安の金額にすぎません。

    このように弁護士費用を決める際には単純に基準化できない要素も考える必要があるため、弁護士としては、特に考慮すべき要素のある事件では、委任契約の際に、なぜその金額の弁護士費用になるのかという説明をすることになります。

    この説明の方法や程度については、何かルールがあるわけでなく、個々の弁護士の考え方や個性によって、温度差が出るところでもあると思います。

    弁護士としては、弁護士費用について明確な説明をすることで、依頼者にこのような不安を与えないことが重要ですし、依頼者から確認を求められた場合には、誠心誠意説明を尽くすことが大事と言えます。

    これは弁護士に相続問題を依頼する場面に限ったことではなく、依頼する弁護士を決める際には、弁護士費用についての説明が明確であること、納得いく説明が受けられることも重要です。

     

    ➅立地が便利、時間の融通が利く

    弁護士の紹介サイトでは、この点も弁護士選びのポイントとして挙げるものがあります。

    もちろん事務所の立地や相談時間などアクセスがよいのに超したことはありません。

    しかし、札幌だと、立地については、ほとんどの事務所が札幌の中心市にありますし、相談時間についても、若手弁護士を中心に、夜間や土日の対応も行うようになっているので、弁護士ごとに大きな差は出にくいと思います。

    また、初回の法律相談は特に重要なため、面談で行うことが必須だと思いますが、解決に向けた方針が決まった後は、電話、手紙、メールなどのやり取りで進めることもできるので、弁護士との面談を前提にするアクセスはそれほど重視する必要がないのかと個人的には思います。

    ただ、日中が仕事などで電話等の連絡がつかない方の場合には、メールでやり取りができると便利です。依頼者とのやり取りをメールで行うかどうかは法律事務所や弁護士によって差が出ると思いますので、人によってはこの点は事前に確認を取っておいた方がよいと思います。

     

    ➆返信が早い、フットワークが軽い

    この点も、弁護士の紹介サイトが弁護士選びのポイントに挙げるところです。

    弁護士からの返信が早い、フットワークよく動いてくれるという点は、弁護士が依頼者と信頼関係を築いていく上で大事なポイントであり、これを重要視する弁護士も多いと思います。

    ただ、この点は、弁護士に依頼する前の段階ではなかなか見えにくいところですし、返信が早いということと弁護士としての能力・実力が直接関連してくるというわけでもありません。

    そうすると、返信が早いからということを積極的な理由として弁護士に依頼することはないと思いますので、弁護士に依頼した後にあまりに返信が遅かったり、なかなか動いてくれないというときに、本当にその弁護士への依頼を続けるのかという場面で考慮する要素になるのかと思います。

     

    弁護士の人柄に関する選び方のポイント

    弁護士の紹介サイトでは、➇話しやすく、質問しやすい、➈説明が丁寧、➉自分と合うと感じられるといった弁護士の人柄に関する点を弁護士選びのポイントとして挙げるところが多いようです。

    これらの要素は弁護士に依頼した後の満足度を上げる要素にはなりますが、➆の返信の早さと同じように、弁護士としての能力や実力に直接関係するところではありませんので、これらの点を基準に弁護士を選ぶということにはなりにくいと思います。

    もちろん、話をまったく聞いてくれなかったり、人としての相性が合わないという場合は、その弁護士に依頼するのは避けた方がよいのは間違いありませんが、そうなるのは余程の場合に限られるのではと思います。

    ただ、その弁護士に依頼しようと思うためには、弁護士の説明に納得し、その弁護士を信頼することが大前提になると思います。

    その意味では、説明が丁寧であるというよりは、解決に向けた方針や弁護士費用について、納得する説明が得られることが大事であり、その弁護士の能力や実力というものもその説明内容に自ずと現れてくるものなのではないかと個人的には思います。

     

    最後に

    以上のとおり、弁護士の紹介サイトが提示する相続問題に関する弁護士選びのポイントについて思ったところを書いてきました。

    まとめると、ホームページや電話帳で相続問題に詳しそうな弁護士や法律事務所を探し(場合によっては知人に紹介してもらって)、その弁護士に法律相談をする中で、弁護士によるその問題に関する解説や解決に向けた方針、弁護士費用の説明を受けて、ご自身として納得して、その弁護士のことを信頼できた場合には、その弁護士に依頼するというのがよいのではないかと思います。

    逆に弁護士の説明内容や態度・対応に疑問が残った場合には、他の弁護士にも相談をすることで信頼できる弁護士を探していくことが重要だと思います。

    また、その弁護士が信用できそうだと思った場合も、セカンドオピニオンとして他の弁護士の法律相談を受けてみるというのもよいと思います。

    複数の弁護士に法律相談をすることで弁護士の中で比較ができるようになりますので、その中で最も信頼できる弁護士に依頼するというのが、安全な弁護士選びの方法だと思います。

    特に最近では,札幌市内では相続問題について無料相談を実施している法律事務所も増えています(当事務所も遺産相続問題の無料相談実施中です)。

    相談料の点では法律相談を受けるハードルは確実に下がってきておりますので、こういった法律相談を複数利用して、弁護士を選んでいくというのもよいのではないかと思います。