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  • 自賠責で14級とされたTFCC損傷の後遺症につき裁判で12級と認められた事例
  • 自賠責で14級とされたTFCC損傷の後遺症につき裁判で12級と認められた事例
    堀江・大崎・綱森法律事務所
    大崎 康二

    先日,TFCCが問題になっている方の裁判で後遺障害等級を12級と認めることを前提とする和解案を裁判所から提示され,これに従って和解によって解決できた事例がありました。

    <交通事故によるTFCC損傷>

    TFCC損傷という怪我はあまりお聞き覚えがないかもしれませんが,TFCCは,正式には三角線維軟骨複合体という名称の手首の部位のことであり,これは三角線維軟骨(TFC)や手関節尺側側副靭帯などからなるとされています。このTFCCが損傷した状態をTFCC損傷といいます。

    TFCC損傷になると,ドアノブを回す,タオルを絞るというように手首を捻る際に手首に強い痛みが出ることが多いと言われています。交通事故の場面に限って言えば,交通事故によって転倒して手をついた場合や,ハンドルを握った状態で交通事故に遭った場合のように,手首に過度の荷重がかかった場合に,TFCC損傷が発生するようです。

    この方も交通事故によって左手首のTFCC損傷となり,MRI検査でも明確にTFCC損傷の所見が認められていました。

    <自賠責保険では14級の認定>

    交通事故によってTFCC損傷になった場合,後遺障害等級としては,いくつかの等級に該当することが考えられるのですが,手関節に大幅な可動域制限が出ていない場合には,主には12級か14級かが問題となります。

    実務的には,TFCC損傷になっていることが画像検査などの他覚所見によって確認できる場合には12級が,そういった他覚所見がないものの,痛みの発生機序を医学的に説明できる場合には14級が認定される傾向が強いとされています。

    このケースではMRI画像で明確にTFCC損傷が確認できていたため,このような基準に照らせば,12級の認定を受けられてよいはずです。しかし,自賠責保険の後遺障害等級認定では,TFCC損傷の症状を「他覚的に裏付ける医学的根拠に乏しい」という理由で12級が認定されず,14級の認定に止まりました。

    自賠責保険では,TFCC損傷などの軟部組織の損傷については,画像所見があったとしても12級の認定を認めない傾向があるため,このケースでも14級の認定に止まったのではないかと思います。

    このような認定傾向からすると,自賠責保険に後遺障害等級の異議申立をしたとしても,これが認められる可能性も低いことから,民事訴訟を提起し,後遺障害等級を争うことにしました。

    <裁判では12級前提の和解成立>

    裁判の中で相手方は,事故から3週間は手首痛の記載がカルテになかったことや,この方のスポーツ歴などからTFCC損傷は,交通事故以外の原因で発生したものだと主張していました。

    しかし,このケースでは,事故当初は全身に痛みが出ていたために,手首痛のことが特にカルテに記載されなかったという事情がありましたし,スポーツ歴はあるものの,スポーツが原因で手首痛が発生したことを示す証拠はまったくありませんでした。

    こういったことから,相手方の反論は認められず,最終的には,裁判所からは,後遺障害等級を12級と認めることを前提に,和解金額を860万円とする和解案の提示を受けることができました。

    このケースは,過失割合の争いも大きかっため,もしも裁判を起こさずに後遺障害等級14級を前提に示談交渉をしていた場合には,例え弁護士が示談交渉に当たったとしても,相手の保険会社は100万円以上の示談には応じてこない可能性がありました。

    これとの比較で言えば非常に多額の和解金になりましたし,後遺障害等級以外の論点についても,ほぼこちらの主張が認められ,勝訴判決に等しい内容でした。こちらにとっては十分に満足の行く和解案だったため,裁判所の提案どおりに和解を行うことにしました。

    <明暗を分けたのは協力医の意見書>

    裁判を起こすに当たっては,専門医にこの方の医療記録を読んでいただき,MRI画像でTFCC損傷が確認できることや,この方のTFCC損傷から手首痛が発生する機序について意見書を作成いただきました。

    裁判官は,医学的な専門知識を持っているわけではありませんから,MRI画像をそのまま見てもらったとしても,TFCC損傷になっているかどうかということを読み取ることはできません。そのため,その点を医学的に解説した意見書が必要となるのです。

    TFCC損傷というのは診断が簡単ではなく,手首の専門医でないと正確な診断が難しいそうです。今回は,手首の専門医に意見書を書いていただくことができましたし,MRI画像のどの部分を見ればTFCC損傷が確認できるのかという点について,私とも意見交換しながら作成していただいたので,裁判官にもわかりやすい形で意見書を作ることができたと思います。

    このような意見書を出すことができたことが今回の和解を獲得できた最大の要因だと思っています。

    <TFCC損傷の問題も弁護士へ>

    TFCC損傷は,まだ知名度はあまり高くはないかも知れませんが,私も最近になって相談を受けることが多くなっていますし,TFCC損傷という診断は受けていなくても,交通事故が原因で手首痛に悩まされている方は多いのではないでしょうか。

    TFCC損傷は,自賠責保険の後遺障害等級の認定傾向からすると12級の認定は下りにくい怪我ではあるものの,裁判の中で後遺障害等級を争うことで,12級の認定を受け,より多額の損害賠償を受けることができる可能性があります。また,専門医でないと診断が難しいため,本当はTFCC損傷であるのに,それが見逃されたままで後遺障害等級の認定手続や示談交渉が進められてしまっているケースも多いのではないかと思います。

    したがって,交通事故によるTFCC損傷の診断を受けた方や明確な診断名はついていなくても手首痛でお悩みの方がいれば,一度,弁護士に相談されるとよいと思います。

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