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  • 認知症高齢者がいる家族の資産横領問題。横領を防ぐ成年後見人について。
  • 認知症高齢者がいる家族の資産横領問題。横領を防ぐ成年後見人について。
    堀江・大崎・綱森法律事務所
    大崎 康二

    「高度認知症の父親の面倒を見ている兄夫婦が父親の預貯金を勝手に引き出して使い込んでいるようだ。」

    このような高齢者の親族による着服に関する相談を受けることが最近増えているように感じます。このように生前に発覚するケースもあれば,亡くなった後に遺産分割協議の中で親族による着服が明らかになることもあります。

    横領・着服が発覚した際の対応は?

    生前に発覚したケース

    生前に発覚したケースについては,成年後見制度(知的障害や認知症などにより判断能力が十分でない方が不利益を被らないように家庭裁判所に申立てをして,その方を援助してくれる人(成年後見人)を付けてもらう制度)を利用します。お父さんの成年後見の申立を行い,お父さんの成年後見人(このようなケースでは,多くは弁護士などの専門職が成年後見人として選任されます。)を選任した上で,その成年後見人が加害者とされる親族に対する損害賠償請求や不当利得返還請求を行うことになります。

    死後に発覚したケース

    また,死後に発覚したケースについては,相談いただいた方の代理人として,加害者とされる親族も含めた横領の事実を踏まえた遺産分割協議を行うこともありますし,端的に加害者とされる親族に対して,損害賠償請求や不当利得返還請求を行うこともあります。

    成年後見人が横領・着服に関与していたケース

    さらには,弁護士の業務としては,すでに開始されている成年後見事件の中で,成年後見人になっていた親族に着服が疑われる場合に,裁判所の職権で,弁護士などの専門職の成年後見人を関与させることもあり,このような場合には,成年後見人として親族による着服ケースに関わることもあります。

    認知症高齢者の増加と共に着服被害も増える可能性がある

    成年後見事件における親族による着服被害は,平成24年度の統計で1年間に575件,45億7千万円に上ったという報道もされているところですが,このような問題は,高齢化社会の進展により今後も増え続けていく可能性が十分にあります。

    他方で,高齢者の着服被害については,被害者ご本人が死亡されていたり,ご存命であっても記憶力や理解力が極度に低下していることから,実際に被害者ご本人と加害者との間で何があったのかという点が不明であることも多く,民事訴訟などの踏み切ったとしても,被害金の取り戻しは必ずしも容易ではありません。

    このような状況から,今後は,高齢者の資産の保護というものがこれまで以上に重視されるようになると思います。

    高齢者の資産を守るための後見制度支援信託や任意後見契約

    後見制度支援信託制度とは?

    成年後見の分野では,1000万円以上の資産のある成年後見については,後見制度支援信託という制度の利用が進んでいます。

    後見制度支援信託というのは,成年後見の本人の資産を裁判所の指示で信託銀行に信託し,自由な払戻を制限するというもので,これによって成年後見人が手元で高額資産を管理するという事態を解消し,ひいては成年後見人による横領被害の防止が期待されています。 家庭裁判所はこの後見制度支援信託の利用に積極的であるため,今後はさらに制度利用が進んでいくことはほぼ間違いないと思います。

    任意後見契約とは?

    さらに,このような親族による着服被害を予防するための一つの方法として,任意後見契約を利用することも考えられます。

    任意後見契約は,自らが一定程度の認知症を発症するときに備えて,そうなったときの自らの資産の管理方法や希望する使途などを事前に決めておき,それを自らが選任した任意後見人に委ねるというものであり,これは公正証書で作成する必要があると決められています。元来は資産管理における本人の意思尊重のための制度ではあるのですが,任意後見人を弁護士などの専門職委ねることで,親族による着服被害を予防するという面も期待されるところです。

    資産の管理プランを早めに考えていくことが大切です

    いずれにしても,この問題については,十分な対応策が講じられているとは言いがたく,今後も対策が検討されていくはずですから,数年後にはまた新しい対策が講じられることになるかもしれません。

    また,ご自身の資産については,まだ十分な判断能力があるうちに,その金額の多寡にかかわらず,認知症発症後にはどのような管理を行っていくのかというプランを自分なりに考えていくということが,これまで以上に求められる時代になっていきているのだと思います。