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  • 過労問題が心身に与える影響。会社がとるべき対策は?
  • 過労問題が心身に与える影響。会社がとるべき対策は?
    ほっかい法律事務所
    種田 紘志

    このところ、時間外労働(いわゆる残業)に関するニュース等が多々取り上げられているのを目にする方も多いのではないでしょうか。

    また、労働者側、使用者側問わず、セクハラ・パワハラ、残業代請求、労災、労働組合、解雇の問題等、労働問題でお悩みの方も多いと思います。

     

    労働は人間の権利かつ義務です。そして、職場は生活の糧を得る重要な場であり、かつ、さまざまな人と人とが交わる場ですので、どうしてもトラブルが起こりがちです。

    その中から、今回は労働問題に多い過重労働についてお話したいと思います。

     

    過労問題と心身にかかる負荷

    時間外労働は企業の運営上必要な場合も有りますので、時間外労働をすること(させること)だけで問題と言うことは多くはないと思いますが、反面、時間外労働が過重・過多になってくると、対象となる労働者への負荷が強くなっていきます。

    この負荷が強くなると、ストレスも同様に上昇をすることとなり、場合によっては健康被害が生じることもあります。

    昨今のニュースで取り上げられているのは、精神疾患(うつ病など)が多いですが、その他にも脳出血のような脳疾患、心筋梗塞のような心疾患のリスクも同様に上昇すると考えられています。

     

    精神疾患、脳疾患等に関する労災の基準

    労使双方にとって、前記のような事態を生じさせるような従業員の労務管理を行うこと・労務管理がされることは、不適切であることは明らかだと思います。

    さらに、そのような状況下で実際に事が起こってしまった場合、それは労災に該当するものとなるかもしれません。

     

    労災該当性が問題になる場合、考慮される(一つの基準となる)労働状況は以下のとおりです。
    (このほかにも基準は存在するため、これを満たすからといって直ちに労災となるわけではありません。)

     

    ① 精神疾患の場合

    (特別な出来事か出来事かで判断過程は異なります)

     

    「特別な出来事」(心理的負荷が「強」と判断されるもの)

    ・発病直前の1か月に概ね160時間以上の時間外労働を行った場合

    ・発病直前の3週間に概ね120時間以上の時間外労働を行った場合

     

    「出来事」(内容に応じて負荷が分かれるが、以下は心理的負荷が「強」と判断されるもの)

    ・発病直前の2か月間連続して1月あたり概ね120時間以上の時間外労働を行った場合

    ・発病直前の3か月間連続して1月あたり概ね100時間以上の時間外労働を行った場合

     

    「修正要素」(他の要素と相まって心理的負荷を「強」とするもの)

    ・転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合など
    (出来事の後の100時間の時間外労働が修正要素に当たります。)

     

    ② 脳疾患等の場合

    「異常な出来事」

    ・緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態

    ・急激で激しい作業環境の変化

     

    「短時間の過剰業務」

    ・発祥直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められること

    ・発症前概ね1週間以内に継続した長時間労働が認められること

    ・休日が確保されていないこと など

     

    「長時間の過剰業務」

    ・発症前1か月に100時間の時間外労働があるか

    ・2~6か月平均で月80時間の時間外労働があるか

     

    会社が取るべき対策

    これまでは実際に事が起こってしまった場合をお話ししてきましたが、労使双方にとって最も重要なのは、事を「起こさない」ようにすることであろうと思います。

    そのためには、過重労働の観点では、当たり前のことになりますが不必要に労働(残業)をさせない・しないことがまず第一です。

     

    また、使用者側においては、残業時間が多くなった人がいる場合、その人に負担がかかっていないか、使用者の方で配慮をし、積極的にコミュニケーションをとるべきでしょう。

    そして、そのためにはコミュニケーションが取りやすい職場作りが非常に重要となります。
    (いたずらに長時間労働を進めるような事はあってはなりません。)

     

    場合によっては、社外資源(例えば医師、地域産業保険センターなど)と連携を取ることも重要です。
    (ちなみに、法律上、100時間を超える時間外労働があり、申出がある人については医師の面接指導が義務とされています。)

     

    労使それぞれにおいて、問題を抱え込んでしまう前に、現状の労働条件・環境で問題がないのか、ご相談をおすすめします。

     

    過労問題など労働問題でお悩みの方におすすめの一冊

    過労を含む一般の方の労働問題に関するちょっとした疑問にお答えするため、札幌の若手弁護士達が、共著で、平成23年3月に、分かりやすい解説書を出版しました。

     

    おしえて弁護士さん 職場のギモン48」(旬報社刊)です。

    事例形式で、各パートの導入部分は一般の方に分かりやすいようくだけた調子で(最初にイラスト入りの登場人物紹介が載っている画期的な法律解説書です。)書かれており、解説部分は弁護士が実際によくあるご質問に丁寧に回答しています。

     

    常に読みやすく、ちょっとした疑問を解消するのに適切な一冊ですので、ぜひ入手してお読みいただけたらと思います。

     

    過労問題でお悩みの方は当事務所までご相談下さい

    当事務所は、労働者側からの労働問題のご相談と使用者側からの労働問題 双方からのご相談を受け付けております。

     

    労働者側からのご相談に関しては電話・メールなどによる無料相談も承っています。

    時間外労働が余りに多く過酷である、会社内において、時間外労働が加重にならないようにはどうすれば良いか、など、どうぞご遠慮無くご相談ください。