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  • 交通事故による腱板断裂・腱板損傷のトラブル。保険会社への対応は?
  • 交通事故による腱板断裂・腱板損傷のトラブル。保険会社への対応は?
    ほっかい法律事務所
    大崎 康二

     最近,交通事故の相談の中で,交通事故によって「腱板断裂」,「腱板損傷」の診断を受けたものの,保険会社との間でトラブルになっているケースの相談が増えているように思います。

    「腱板断裂」「腱板損傷」とは?

     腱板というのは,肩甲骨と上腕骨をつなく板状の腱のことをいうのですが,この腱板が一部で切れたり(不全断裂),完全に切れたり(完全断裂)することを「腱板断裂」,「腱板損傷」といいます。正確には,「腱板損傷」は、腱板が断裂したもの(腱板断裂)の他に,腱板が炎症を起こしたもの(腱板炎)も含まれるので,「腱板損傷」=「腱板断裂」ではないのですが,ここでは特に2つを区別をせずに書いていきます。

     「腱板断裂」,「腱板損傷」の原因は,加齢による自然発生的なものの他,外傷によるものがあるのですが,外傷による「腱板断裂」,「腱板損傷」の典型的場面の1つが交通事故による発症です。

     「腱板断裂」,「腱板損傷」を発症すると,肩の運動障害や肩の運動時の痛み,就寝時の痛みといった症状が起きます。加齢による「腱板断裂」,「腱板損傷」の場合は,発症当時は五十肩と考えて放っておいたがのが,いつまでも痛みが引かず,整形外科を受診して「腱板断裂」,「腱板損傷」の診断を受けるという経過が多いようです。

    交通事故による「腱板断裂」「腱板損傷」の問題点

    時間が経ってから腱板断裂・腱板損傷と判明することも

     交通事故による「腱板断裂」,「腱板損傷」の場合は,事故直後は全身に痛みが生じることが多く,相対的に肩の痛みは目立たなかったのが,時間の経過により全身痛が引いていく中で肩の痛みを強く訴えるようになり,さらに治療を継続しても肩の痛みが引かないためにMRI検査などで精査そして,「腱板断裂」,「腱板損傷」の診断に至るという経過を辿ることが比較的多いように思います。

     このような経過を辿った場合,事故直後のカルテや診断書には肩痛に関する記載がなく,事故から1ヶ月以上経過した後に,初めて肩痛の記載が始まり,「腱板断裂」,「腱板損傷」の記載が出てくるのは事故の半年後からということも起こりえます。
     
     これ自体は「腱板断裂」,「腱板損傷」の特性から考えれば何も不自然なことではないのですが,保険会社とのやりとりの中では,事故直後には肩痛が存在しなかったのが,事故後に発生した何らかの原因で「腱板断裂」,「腱板損傷」を発症したに違いないというように曲がった解釈を保険会社がしてくることがあります。

     また,「腱板断裂」,「腱板損傷」は,加齢によって発生することも多いのですが,加齢により発生した「腱板断裂」,「腱板損傷」の中には,発生からしばらくの間は自覚症状がなかったものの,交通事故をきっかけに自覚症状がはじめて発生するというケースもあります。

    交通事故とは無関係と判断されてしまうケースが問題に

     これらのケースでは,「腱板断裂」,「腱板損傷」は交通事故によって発生したものではない,つまり「因果関係」がないと保険会社が判断してくることがあり,ケースによっては,保険会社から治療費の支払を打ち切られたり,慰謝料の減額根拠として主張されることがあります。また,自賠責保険の調査事務所から後遺障害等級の認定が得られず,保険会社との示談交渉の中で不利に扱われることもあります。

     このように「腱板損傷」,「腱板断裂」は,交通事故との関係では保険会社との間でトラブルになりやすい疾患であり,そのため,対応に困って相談に来られるという方が多いように感じます。

    保険会社と交渉をする際の留意点

     「腱板損傷」,「腱板断裂」のケースで保険会社と交渉するに際しては,通院の際のカルテなどをすべて取り寄せた上で,医学的な観点から交通事故との因果関係を説明することが不可欠になります。これは,示談交渉による解決が得られず,損害賠償請求訴訟を起こす場合も同様です。

     このように医学的な観点から主張立証を組み立てることで,初めて「腱板断裂」,「腱板損傷」のケースにおいて適切な解決を得ることができるようになりますので,「腱板断裂」,「腱板損傷」のケースに対応するためには,上記のような「腱板断裂」,「腱板損傷」の特性などの医学的知識が不可欠になると言えます。

    交通事故による痛みはしっかりと医者に伝えることが大切

     ただし,いかに医学知識を駆使したとしても,カルテや診断書上の記載が不十分であると,保険会社や裁判所を説得に苦慮することが多いのも現実です。

     ですので,交通事故で病院を受診する場合には,痛いところがある場合には,医師に遠慮することなく,それを明確に訴えることが重要になります。当初はそんなに気にならない痛みだったとしても,痛いところは痛いとしっかり伝えることが大事です(これは「腱板断裂」,「腱板損傷」のケースに限った話ではありませんが)。

     最近は札幌の病院でも交通事故の場合に「腱板断裂」,「腱板損傷」の診断を積極的に行い,治療をしてくれる病院が増えてきていると思います。その分,保険会社との間でトラブルになるケースも増えてきておりますので,交通事故による「腱板断裂」,「腱板損傷」でお悩みの方は是非当事務所までご相談いただければと思います。

     当事務所では,交通事故無料電話相談・無料メール相談(無料電話相談,無料メール相談は北海道内で発生した交通事故に関する相談に限り対応)を実施しております。