ブログ

  •  > 
  •  > 
  • 交通事故で労災保険を利用する際の注意点
  • 交通事故で労災保険を利用する際の注意点
    ほっかい法律事務所
    大崎 康二

    業務中や通勤中に交通事故に遭った場合は,労災保険を利用することができます。

    労災保険を使うことで主には,治療費や休業損害の補償などを受けることができるようになります。また,治療後に後遺障害が残った場合には,それに応じた年金を受け取ることもできます。

    一般的には,労災保険の対応は被害者に手厚く,特に治療については,十分な期間の治療が補償されると言うことができ,保険会社との間でよく問題となる治療の打ち切りに伴うトラブルもあまり聞くことがありません。

    ときに労災保険の利用を勧めると,加害者の保険会社がすべて支払うべきであり,被害者の労災保険を使うのはおかしいとおっしゃる方もおられますが,十分な治療を受けて怪我を治すという観点からは,できるかぎり労災保険を利用して治療を受けるのがよいでしょう。

    労災保険を利用する際に気をつけなければならないのは,労災保険で支払われた部分は,その一部が損益相殺といって,加害者の保険会社に請求する損害賠償金から差し引かれるのですが,この差し引きのルールがやや特殊だという点です。

    1つ目のルールは,労災保険の中でも「特別支給金」や「特別年金」というように「特別」という名前がつく給付については,この差し引きの対象とはならないという点です。これは保険会社の担当者もよくわかっているため,間違いの起きにくいところです。

    2つ目のルールは,その給付金と同じ名目の損害費目からしか差し引きが認められないという点です。治療費として支払われる療養給付であれば,治療費以外から差し引いてはいけないということです。

    例えば,過失相殺が被害者側に20%発生するケースで100万円の治療費が掛かったという場合,加害者の保険会社に請求できる治療費は,過失相殺の計算後は80万円に限られます。

    もしもこのケースで,労使保険を利用し,病院にすでに100万円の療養給付(治療費)を支払っていた場合,この療養給付は治療費の金額,つまり過失相殺後の80万円分の中からしか差し引くことができず,療養給付金100万円のうちの80万円だけを差し引くことができるということです。

    そうすると,療養給付として支払われた残りの20万円の扱いが問題となるのですが,これはどこからも差し引くことはできません。例えば,同じケースで治療費の他に慰謝料が100万円請求できたとしても,慰謝料からこの残った20万円を差し引くことはできないということです。

    この点は保険会社の担当者も意外と把握していないことがあり,本来80万円しか差し引くことができないところを全額の100万円を差し引いて損害賠償金を計算してくるケースがありますので,注意が必要です。

    このように労災保険を利用しているケースでは,損害賠償金の計算がやや特殊になるため,労災保険を利用したケースで保険会社との交渉にお悩みの場合は,交通事故無料相談を実施しております当事務所までご相談ください。