ブログ

  •  > 
  •  > 
  • 逸失利益は減収なしの場合でも損害賠償請求はできる?
  • 逸失利益は減収なしの場合でも損害賠償請求はできる?
    ほっかい法律事務所
    大崎 康二

    交通事故に遭って後遺障害が残った場合、その後遺障害によって生じると予想される将来の減収分を逸失利益として損害賠償請求することができます。

     

    しかし、逸失利益についての損害賠償を請求する場合に、加害者(保険会社)側から「収入が減少していないので逸失利益は認められない」という反論がなされることがあります。

     

    今回はこのような減収がない場合の逸失利益についてのお話です。

    減収がなければ本当に損害賠償請求ができないのか、という点について説明します。

     

    逸失利益とは?

    冒頭でもお話したように、交通事故の被害に遭い後遺障害が残った場合、一般に後遺障害により労働能力が失われ、これにより将来にわたって減収が生じるとして「逸失利益」が損害賠償請求が認められています。

     

    例えば、交通事故で脊髄損傷になって身体の一部に麻痺や不全が残ったという場合には、その後遺障害音程度に応じて事故前と同様の労働ができなくなり収入が減少することが考えられます。

     

    このような場合には、その後も継続すると予想される減収分を逸失利益として請求することができます。

     

    減収なしの場合の逸失利益はトラブルになりやすい

    逸失利益の請求については、後遺障害認定の時点ですでに減収が発生している場合には将来的にもその減収の継続を予想しやすく、特にトラブルにはなりにくいといえます。

     

    しかし、特に公務員や事務職の場合には、就労先の配慮や仕事の内容によっては後遺障害が残っても現実には減収は生じないということがありえます。

     

    このように現実に減収がない場合の逸失利益の請求については、保険会社が逸失利益の支払を拒否するなどしてトラブルになることが多く、裁判の中で争いになることもよくあります。

     

    裁判所は、逸失利益については後遺障害が無ければ得られたと考えられる収入から後遺障害を残した状態で得られ、又は得られると考えられる収入を控除した差額が損害賠償の対象となり、現実の減収が無い場合には「特段の事情」がない限り逸失利益の損害賠償を認めないという立場を採っています。

     

    つまり、裁判所は現実に減収がないケースにおいて逸失利益の損害賠償が認められるためには、「特段の事情」が必要となるという立場をとっているといえます。

     

    減収なしの場合でも逸失利益の請求ができる「特段の事情」

    では、減収が無い場合、どのような事情があれば「特段の事情」が認められて逸失利益の損害賠償が認められるのでしょうか。

     

    一般には以下のような事情が考慮されるものといわれています。

    ①事故前に比べ、本人が努力し収入を維持しているのか。

    ②昇進・昇給等における不利益が生じているか。

    ③業務へ支障を来しているか。

    ④退職・転職を余儀なくされる可能性があるか。

    ⑤勤務先の規模・存続可能性。

    ⑥勤務先の配慮や温情により、収入が維持されているに過ぎないのか。

    ⑦生活上の支障が生じているか。

     

    交通事故損害賠償請求の訴訟では、以上のような事情を主張立証することによって現実に減収が無い場合であっても逸失利益の損害賠償が認められる場合があります。

    特段の事情がある場合の裁判の傾向

    実際の裁判では、実際の減収がなかったとしても、特に上記の①、②の事情を比較的緩やかに認定することで逸失利益の賠償を認める傾向にあるといわれています。

     

    特に重度の後遺障害の場合には、減収が発生しないのは本人の努力によるものだということを事実上推定し、逸失利益の賠償を認める傾向が強いといえます。

     

    実際、当事務所でも、症状固定時において交通事故に遭う前よりも年収が約100万円増額していたケースについて、上記のような事情(特に、昇進が遅れたこと、後遺障害によって現在業務に支障を来していること、本人の努力によって現在の地位・収入を確保していること)を主張立証することにより、逸失利益の損害賠償を認める判決を獲得した例があります。

     

    公務員は減収なしだと逸失利益の請求ができないケースが多い?

    減収が発生しにくい職種として特に指摘されるのが公務員の方です。

     

    公務員の方については、上記の①、②の事情が認められにくいという面はあるものの、最近では障害の程度や職務の内容から一定の逸失利益の賠償を認めた裁判例も多く出るようになってきています。

     

    裁判である以上、現実の損害発生の有無はもちろん重視されるものの、後遺障害が残ったことによって将来発生する事態をすべて的確に予想することはできないことから、裁判所としても被害者保護の観点から上記のように比較的緩やかな運用を行なっているのではないかと考えています。

     

    減収なしで逸失利益が請求できない場合は弁護士へご相談を

    このように交通事故により後遺障害が残った場合、現実に減収が無い場合であっても逸失利益の損害賠償が認められる場合があり、裁判でも比較的緩やかに認定される傾向にあります。

     

    「収入が減少していないので、逸失利益は認められない」という保険会社の主張を安易に受け入れてしまうと、本来得られるべき損害賠償額が得られないこともなりかねません。

     

    逸失利益が認められるかどうかによって損害賠償額は大きく異なることになりますので、このような場合にはぜひ弁護士にご相談ください。

     

    当事務所では、交通事故無料電話相談・無料メール相談を実施しております。

    交通事故の損害賠償請求などでお困りの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。