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  • マンションの滞納管理費の回収方法【交渉編】
  • マンションの滞納管理費の回収方法【交渉編】
    堀江・大崎・綱森法律事務所
    大崎 康二

    分譲マンション増加に伴う管理費滞納問題

    札幌市内の分譲マンションは,昭和54年ころから順調に数を増やしており,平成22年時点の札幌市の統計では,棟数が約3500棟,戸数が約16.6万戸とされています。

    その後の札幌市の統計はありませんが,国の統計なども考え合わせると,現在では棟数は4000棟前後,戸数は18万戸前後まで増加しているのではないかと思います。

    このような分譲マンションの増加に伴ってのことだと思いますが,近年はマンションの管理費滞納案件も増加しており,滞納管理費の回収を依頼いただく機会が増えています。管理費滞納の背景には,札幌市内の経済状況及び雇用状況の悪化という面もあるように思いますので,この傾向は今後も続くものと思います。

    マンションの滞納管理費の回収ケース

    管理費滞納案件の相談をいただくのは,管理会社を通じてのこともありますし,管理組合の理事長様から直接いただくこともあります。管理費の請求主体は管理組合ですので,最終的に事件として受任する場合には,管理組合との間で委任契約を締結します。

    交渉と滞納費返済方法の提案

    滞納管理費の回収事件に着手する場合,通常は滞納されている方との交渉から入ることになります。滞納金については,一括で支払っていただくことがベストですので,滞納されている方には,まずは親族等の協力で一括払いができないかを検討していただくことになります。

    このような協力が得られない場合には,分割払いの可否を検討することになりますが,多くのケースでは,家庭内の収支の悪化が滞納の原因となっておりますので,分割払いの計画を立てる場合には,滞納されている方の家計の状況を明らかにしていただき,収支改善のアドバイスもしながら,計画を立てていくことになります。

    しかし,ケースによっては,収入が途絶えているなどの理由で,このような分割弁済の計画を立てることができないこともあります。その場合には,お住まいの部屋を任意売却していただくようにお願いすることになります。

    任意売却が優先だが不動産競売にかけるケースも

    管理組合が持っているマンションの管理費請求権には,法律によって,先取特権という担保権が与えられています。この担保権の存在によって,管理費に滞納があった場合には,管理組合はいつでも滞納のあった部屋を不動産競売にかけることができます。

    通常は,不動産競売にような強制執行手続を行なうためには,裁判を起こして勝訴判決を得なくてはならないのですが,この先取特権のおかげで,管理組合は,裁判を経ることなく不動産競売手続を行なうことができます。

    管理費滞納の関係で民事訴訟を提起しなければならないのは,先取特権の対象外物件を不動産競売にかける必要があるなど場面が限られており,管理費の滞納案件での民事訴訟を提起している例はほとんどないはずです。

    管理組合としては,滞納されている方との交渉が破断した時点で,すぐに不動産競売を申立てることもできるのですが,不動産競売は手続が完了するまでに時間を要する,競落価格が低額になるリスクがあるといったデメリットがあります。

    他方で,任意売却の場合には,競売よりも高額で売却できる可能性がある,ケースによっては引っ越し費用等の支出ができる,売却までが早いといった双方にとってのメリットがあるため,滞納されている方には,まずは任意売却で進めること提案します。

    私の経験では,このような交渉を経ることで大半のケースは解決に向かうことになるのですが,ケースによっては,不動産競売の申立てといった法的な手続まで行なわなければならないことになります。この法的な手続に進む場合の対応については,回を改めて説明します。

    弁護士費用は誰が負担するのか?

    このように交渉で解決する場合に扱いが問題になることがあります。それは弁護士費用の負担の問題です。

    基本は管理組合が負担。管理規約によっては滞納者に請求できる。

    弁護士費用は依頼者である管理組合が負担することになりますが,管理規約上に,管理費督促のための弁護士費用を滞納者に請求できるという条項があれば,実際にかかった弁護士費用を滞納金に上乗せして請求することができます。

    管理組合の理事者の立場としては,できる限り管理費用の積立額を減らしたくないというのが当然の感覚です。そのため,弁護士費用については,できる限り滞納された方の負担とするのが穏当であり,管理規約に上記の条項がない場合には,管理規約の改正手続からお手伝いすることもあります。

    もっとも,弁護士費用を滞納者負担とすることができるのは,そのような規定を制定した後に生じた滞納金についての弁護士費用に限られます。ですので,弁護士が受任した後に規定を制定した場合には,弁護士費用分として回収できるのは一部に止まることになります。

    円滑な滞納問題解決のため定期総会のサポートも行います。

    また,実際に弁護士を入れて滞納管理費の回収を行なうという場合,委任契約自体は理事会の判断で行なうとしても,組合員への経過報告を行なうことが期待されます。そのため,理事会からの要請を受けて,弁護士として定期総会に出席し,今後の回収方針や弁護士費用の扱い等について説明することもあります。

    組合員の方によっては,定期総会において分割弁済を容認することについても異論が出ることもあり,この定期総会のサポートというのが受任弁護士として,特に配慮しなければない点であると思いますし,年々そのウェイトが大きくなっていると感じています。