ブログ

  •  > 
  •  > 
  • マンションの滞納管理費の回収方法【競売編】
  • マンションの滞納管理費の回収方法【競売編】
    堀江・大崎・綱森法律事務所
    大崎 康二

    前回は,マンションの滞納管理費の交渉による回収方法の説明を行いました(http://www.hotlaw.jp/blog/335/)。今回は,不動産競売による回収方法の説明を行います,

    滞納管理費の支払がされず,任意売却を行うことできなかった場合には,不動産競売による回収を考えます。

    任意売却ができないケース

    任意売却を行うことができない場合というのは,管理費を滞納している区分所有者(マンションの各部屋の所有権を持っている人)の同意が得られない場合や,マンションの売却価格の見込額が住宅ローン残高以下などの理由で住宅ローン業者から抵当権抹消(マンションに付いている担保を取り外すこと)の同意が得られない場合があります。

    競売による滞納管理費の回収方法

    マンション管理費の請求権には,区分所有法という法律によって,先取特権という担保権が付与されているため,民事訴訟を提起し,勝訴判決を得なくても,直ちに管理費滞納の対象となっているマンションの不動産競売を申立てることができます。

    不動産競売の申立に際しては,競売の手続費用として,裁判所に予納金(札幌ではマンションの場合は50万円とされるのが一般)を納付する必要があり,これは管理組合の負担になりますが,競売成立後は,競売による売却代金の中から優先的に返還されます。

    不動産競売が順調に進めば,競売による売却代金の中から管理費用の回収を図ることができますし,任意売却に同意しなかった区分所有者が不動産競売の申立を契機に任意売却に応じるというケースもあり,不動産競売の申立は管理費回収のための有力な手段になっています。

    無剰余取消により競売が難しいケースも

    しかし,どのようなケースであっても不動産競売を申立てることで順調に管理費の回収ができるというわけではありません。

    不動産競売には,無剰余取消というルールがあり,競売による買受可能価格(競売申立後に不動産鑑定士が算出します。)が住宅ローン業者などの優先的な担保権者の債権残高に満たない場合などに,裁判所の職権で不動産競売手続が取消されてしまうことがあります。

    この場合には,次の手段として,区分所有法59条に基づく不動産競売(59条競売)による管理費の回収を検討します。

    59条競売で滞納管理費の増加を防ぐ

    この59条競売は,形式競売と言われる特殊な競売手続であり,通常の不動産競売とは異なり,無剰余取消ルールが適用されません。

    そのため,多額の住宅ローンが設定されていても,不動産競売を進めることができるのですが,59条競売が認められるための要件は厳格に決められており,不動産競売に先立って,民事訴訟を提起し,この中で59条競売の要件を満たすのかの審理を行い,勝訴判決を得る必要があります。

    この民事訴訟の中では,滞納金額や滞納期間のほか,59条競売以外の回収方法による回収可能性なども慎重に検討した上で,59条競売の申立を許すのかについての是非を裁判所が判断するのですが,どのような条件を満たせばクリアできるのかという点については,過去の判例の集積も十分ではなく,明確な見通しを立てにくい裁判でもあります。

    また,59条競売のための民事訴訟の提起のためには,管理組合総会における特別決議(区分所有者数と議決権総数の4分の3以上の賛成が必要)が要求されるため,裁判のための準備には時間と手間がかかります。

    しかも,59条競売による競売が成立したとしても,売却代金は予納金と優先権のある担保権者に優先配当されますので,管理組合に配当が残されることはほとんどありません。

    競売によってマンションを新たに取得した方は,滞納管理費も承継することになるので,この場合には,新取得者の方に滞納管理費の請求を行うことになりますが,これでは新取得者が現れないことが懸念されるため,競売を行う裁判所からは事前に滞納管理費の放棄を要求されることもあります。

    59条競売の場合は,滞納管理費の回収自体は難しく,むしろ発想としては,健全な区分所有者に入ってもらって,将来の滞納金の発生を止めるというように割り切ることも必要になります。

    堀江・大崎・綱森法律事務所の競売による管理費回収業務方針

    59条競売を行うということは,管理組合にとって簡単な決断ではありません。59条競売が必要となるケースでは,管理組合総会に弁護士として出席し,組合員の皆さまに十分な説明を行い,賛成を得られるようにサポートをすることも重要な業務になります。

    59条競売は,管理組合にかける負担も大きいことから,弁護士としては,できる限り59条競売に行く前に解決を図ることを第一に管理費の回収業務を進めていくことになります。