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  • 有期雇用から無期雇用への転換について
  • 有期雇用から無期雇用への転換について
    ほっかい法律事務所
    種田 紘志

    弁護士の種田です。

    今回は、有期雇用(雇用について期間を設定した契約形態)の形態について、無期雇用(雇用について期間を設定していない形態)への転換に関する法規定を解説します。

     

    有期雇用に関する法律の規定

    有期雇用は、文字通り期間の定めがある雇用形態を指します。

     

    例えば平成29年1月から6月までといった形で定めている場合がこれに当たります。

     

    この期間の定め方につきましては、原則として3年が上限とされています(例外的に5年となる職種も存在します。)。

     

    これに違反して長期の雇用契約を設定した場合(例えば3年が上限となる職種で4年と設定した場合)は、契約期間は3年と修正されることとなります。

     

    他方で下限はどうでしょうか。

     

    実際の職務内容からして1日と設定すれば足りるような場合もありますので、特段〇〇日を下回ってはいけないとする規定はありません。

     

    ただ、必要以上に短い設定をするような場合、労働者に更新の不安を不必要に抱かせることにもなりかねません。

     

    そこで、必要以上に短い期間を定めないように配慮をするように、との規定がなされているところです。

     

    有期雇用が無期雇用に転換する場合

    このような有期雇用に関して、平成24年8月成立の労働契約法(施行は平成25年4月1日)において、一定の場合には無期雇用に転換するというルールが作られました。

    具体的には以下のとおりです。

    1 同じ使用者の下で2以上の有期労働契約があるとき

    先程指摘したとおり、有期契約の上限は基本的に3年ですので、次に出てくる要件との兼ね合いで2以上、つまり1回は更新していることが求められます。

    2 通算雇用期間が5年を超えること

    この「通算」の考え方については例外があります。下で詳しく解説します。

    3 有期労働契約の期間満了前に権利を行使すること

    期間満了後に権利を行使することはできないと考えられます。

    「通算雇用期間」における例外:クーリング

    上述2でお伝えした「通算雇用期間が5年を超えること」の「通算」というのは、原則的には複数の契約の期間を合算することを指します。

    ただし「原則」と書いたとおり、この点には例外が存在します。

     

    それが「クーリング(クーリング期間)」というものです。

     

    「クーリング(クーリング期間)」とは、大まかに言うと「有期雇用契約と有期雇用契約との間に一定期間の空白を置けば、前の有期雇用契約の契約期間は通算しなくても良くなる」というものです。

     

    ではこの「一定期間」とはどのくらいの期間を指すものでしょうか。

     

    法の規定によれば以下のような整理がなされています。

     

    1)原則

    6か月

     

    2)空白期間の直前に満了した一つ(通算しません。)の有期雇用契約が1年に満たない場合

    その2分の1(ただし、2分の1に端数が生じる場合には切り上げ)

     

    例えば空白期間前の契約の契約期間が6か月であった場合、2分の1は3か月ですからクーリング期間は3か月となります。

    契約期間が3か月であった場合、2分の1は1.5か月となりますので、端数を切り上げてクーリング期間は2か月となります。

     

    法規定の現状

    この法規定は5年を超える有期雇用契約が結ばれているときに、権利を行使すれば無期契約(いわゆる正社員)となることが定められているものですが、この規定が定められたときから、5年が既に経過しております。

     

    そのため、無期雇用への転換に関する問題・紛争が少なからず発生してしまっております。ニュースなどでも取り上げられている所でもあります。

     

    有期雇用の方の雇用形態の変更あるいはこれに関して雇い止めをされそうな心配があるときなど、ご自身の雇用に不安がある方は専門家への相談をお勧めします。

    通算して5年が経過している場合、問題なく無期雇用となることが予想されるところですが、これに関しては使用者側において十分な知識を有していないために転換ができなかったといった問題が生ずることも考えられます。

     

    ご自身の有期雇用から無期雇用への転換が問題なくできるかについては、一度専門家である弁護士にご相談していただくことをお勧めします。

     

    また、会社の立場からすれば「どのように扱わなくてはならなくなるか」という点も、専門家と共同して行うことが重要であると考えます。

     

    当事務所は、労働者側使用者側、いずれの立場の方からのご相談も受け付けておりますので、内容を確認したいという方は是非一度ご相談下さい。