ブログ

  •  > 
  •  > 
  • TFCC損傷について。TFCC損傷に関する後遺障害認定事例のご紹介
  • TFCC損傷について。TFCC損傷に関する後遺障害認定事例のご紹介
    ほっかい法律事務所
    堀江 健太

    最近は偶然かもしれませんが、交通事故によってTFCC損傷となった方から相談や依頼をお受けする機会が増えています。

    今回は、TFCC損傷とは何か、交通事故によるTFCC損傷で後遺障害認定された事例や後遺障害14級から12級に変更された事例についてご紹介いたします。

     

    TFCC損傷について

    まず、TFCC損傷とはどのようなものなのか見ていきましょう。

    TFCC損傷とは?

    TFCCというのは、正式には三角線維軟骨複合体という名称の手首の部位のことであり、これは三角線維軟骨(TFC)、手関節尺側側副靭帯および掌側と背側の橈尺靭帯などを含む手関節の尺側支持機構からなるとされています。

    このTFCCが損傷した状態をTFCC損傷といいます。

    交通事故の場面に限って言えば、交通事故によって転倒して手をついた場合やハンドルを握った状態で交通事故に遭った場合のように、手首に過度の荷重がかかった場合にTFCC損傷が発生するようです。

     

    TFCC損傷の症状

    TFCC損傷になると、手関節の疼痛や手首を捻る際の可動域制限が症状として現れます。

    特にタオル絞りやドアノブの開け閉めなどの手関節のひねり運動の際に疼痛が発生することが多いとされており、TFCC損傷となったことによる日常生活への影響は重大です。

     

    TFCC損傷の診断方法とその問題点

    TFCCは軟骨組織で構成されているため、TFCC損傷の有無は通常のレントゲン検査では明らかにならず、MRI検査もしくは関節造影検査などが必要とされています。

    そうすると、TFCC損傷については初期のレントゲン検査では異常なしとされたものの、その後手首痛が治らなかったためにMRI検査を受けて初めて診断されるという経過を辿ることが一般的です。

    交通事故から一定期間経過しないと診断を得られないというのが通常なのです。

     

    また、MRI検査をしたとしても、MRI画像上の微妙な色調の変化からTFCC損傷の存在を読み取るのは、手首の専門医でなければ難しいのが現状です。

    後遺障害等級認定の担当者は医学的には素人であり、手首について医学的な専門知識があるわけではありませんから、担当者がMRI画像からTFCC損傷の存在を読み取ることもまた難しいのが現状です。

     

    TFCC損傷の後遺障害認定における問題点

    このように、TFCC損傷については後遺障害等級の認定手続の中では、診断時期が交通事故時とずれることや、画像上明瞭に確認できないことを理由に等級が認められなかったり、低い等級の認定結果しか認められないことが多いという印象を受けています。

    おそらくは、このような背景があって交通事故によってTFCC損傷を負った方が弁護士に相談するという機会が増えているのではないかと思います。

    このような場合には、手首の専門医にMRI画像の解析を依頼し、TFCC損傷の存在を明らかにした上で後遺障害等級の異議申立を行ったり民事訴訟を提起することで、適切な後遺障害等級の認定を受けることが必要になります。

    では、具体的にどのようのに認定を受けるのか、当事務所で依頼を受けたTFCCに関する実際の事例をもとに見ていきましょう。

     

    TFCC損傷につき異議申立で後遺障害14級が認定された事例

    この事例の依頼者は、主治医より片方の手首についてTFCC損傷の疑いがあるとされていたのですが、MRI画像でははっきりしないため、確定診断ではなく「疑い」とされていました。

    そのため、当初自賠責保険に後遺障害の認定を申請した際は

    ・TFCC損傷が発生したかどうか明らかではないこと
    ・仮にTFCC損傷が交通事故により発生しているものであるとしても、それによる関節痛について後遺障害とまでは言えないこと

    を理由に、後遺障害には該当しないという認定を受けてしまいました。

    一番の問題はそもそも自賠責保険の方でTFCC損傷が発生していることについて確証が無いと考えていることですので、主治医がTFCC損傷の疑いがあると判断する根拠となったMRI画像を依頼者の通っていた病院から取り寄せ、「疑い」ではなくTFCC損傷が発生しているという意見を、主治医とは別の医師から取り付けました。

     

    また、なぜTFCC損傷が発生することになったかについても、依頼者が運転中でハンドルをしっかりと握っていたところに横から加害者の車が突っ込んできたために手首に強い衝撃が走ったという事故状況を詳しく説明しました。

    その結果、当初非該当だったものが14級の認定を受けることができました。

    14級の認定を受けたことで認定を受けていなかった場合と比較し、後遺障害慰謝料と後遺症逸失利益の合計で約200万円賠償金が増額となりました。

    このように医師から意見書と取り付けたり、事故状況の詳細を記載したりした上で、異議申立を行うことにより適切な後遺障害の認定を受けることができる場合があります。

     

     

    自賠責で14級とされたTFCC損傷の後遺症につき裁判で12級と認められた事例

    また、TFCC損傷が問題になっている方の裁判で後遺障害等級を12級と認めることを前提とする和解案を裁判所から提示され、これに従って和解によって解決できた事例がありました。

    この方は、交通事故によって左手首のTFCC損傷となり、先ほど紹介した事例と異なりMRI検査でも明確にTFCC損傷の所見が認められていました。

     

    自賠責保険では14級の認定

    交通事故によってTFCC損傷になった場合、後遺障害等級としてはいくつかの等級に該当することが考えられるのですが、手関節に大幅な可動域制限が出ていない場合には、主には12級か14級かが問題となります。

    実務的にはTFCC損傷になっていることが画像検査などの他覚所見によって確認できる場合には12級が、そういった他覚所見がないものの痛みの発生機序を医学的に説明できる場合には14級が認定される傾向が強いとされています。

    このケースではMRI画像で明確にTFCC損傷が確認できていたため、このような基準に照らせば12級の認定を受けられてよいはずです。

    しかし、自賠責保険の後遺障害等級認定ではTFCC損傷の症状を「他覚的に裏付ける医学的根拠に乏しい」という理由で12級が認定されず14級の認定に止まりました。

     

    自賠責保険では、TFCC損傷などの軟部組織の損傷については画像所見があったとしても12級の認定を認めない傾向があるため、このケースでも14級の認定に止まったのではないかと思います。

    このような認定傾向からすると、自賠責保険に後遺障害等級の異議申立をしたとしてもこれが認められる可能性も低いことから、民事訴訟を提起し後遺障害等級を争うことにしました。

    また、この方は弁護士費用特約に加入されており弁護士費用の心配が不要でした。

    弁護士関与が必要であるという認識も一致したため、私たちが受任することになりました。

     

    裁判では12級前提の和解成立

    裁判の中で相手方は、事故から3週間は手首痛の記載がカルテになかったことや、この方のスポーツ歴などからTFCC損傷は交通事故以外の原因で発生したものだと主張していました。

    しかし、このケースでは事故当初は全身に痛みが出ていたために、手首痛のことが特にカルテに記載されなかったという事情がありましたし、スポーツ歴はあるもののスポーツが原因で手首痛が発生したことを示す証拠はまったくありませんでした。

    こういったことから相手方の反論は認められず、最終的には裁判所から後遺障害等級を12級と認めることを前提に、和解金額を860万円とする和解案の提示を受けることができました。

    このケースは、過失割合の争いも大きかっため、もしも裁判を起こさずに後遺障害等級14級を前提に示談交渉をしていた場合には例え弁護士が示談交渉に当たったとしても、相手の保険会社は100万円以上の示談には応じてこない可能性がありました。

    これとの比較で言えば非常に多額の和解金になりましたし、後遺障害等級以外の論点についてもほぼこちらの主張が認められ勝訴判決に等しい内容でした。

    こちらにとっては十分に満足の行く和解案だったため、裁判所の提案どおりに和解を行うことにしました。

     

    明暗を分けたのは協力医の意見書

    裁判を起こすに当たっては専門医にこの方の医療記録を読んでいただき、MRI画像でTFCC損傷が確認できることやこの方のTFCC損傷から手首痛が発生する機序について意見書を作成いただきました。

    裁判官は医学的な専門知識を持っているわけではありませんから、MRI画像をそのまま見てもらったとしてもTFCC損傷になっているかどうかということを読み取ることはできません。そのためその点を医学的に解説した意見書が必要となるのです。

    TFCC損傷というのは診断が簡単ではなく、手首の専門医でないと正確な診断が難しいそうです。

    今回は手首の専門医に意見書を書いていただくことができましたし、MRI画像のどの部分を見ればTFCC損傷が確認できるのかという点について私とも意見交換しながら作成していただいたので、裁判官にもわかりやすい形で意見書を作ることができたと思います。

    このような意見書を出すことができたことが今回の和解を獲得できた最大の要因だと思っています。

    なお、意見書作成には10万円程度かかりましたが、依頼者は弁護士費用特約を自動車保険に付けていたため作成費用は保険会社に出してもらうことができました。

     

    TFCC損傷の問題も当弁護士へご相談を!

    TFCC損傷はまだ知名度はあまり高くはないかも知れませんが、私も最近になって相談を受けることが多くなっています。

    TFCC損傷という診断は受けていなくても、交通事故が原因で手首痛に悩まされている方は多いのではないでしょうか。

    TFCC損傷のケースで民事訴訟を提起すると裁判官からは、「TFCC損傷とはなんぞや」という態度を取られることが多い現状ですが、我々弁護士も積極的にTFCC損傷のケースに関与することでTFCC損傷の被害実態を訴えていくことが必要だと考えています。

    TFCC損傷は自賠責保険の後遺障害等級の認定傾向からすると12級の認定は下りにくい怪我ではあるものの、裁判の中で後遺障害等級を争うことで12級の認定を受け、より多額の損害賠償を受けることができる可能性があります。

    また、専門医でないと診断が難しいため、本当はTFCC損傷であるのにそれが見逃されたままで後遺障害等級の認定手続や示談交渉が進められてしまっているケースも多いのではないかと思います。

    交通事故によるTFCC損傷の診断を受けた方や明確な診断名はついていなくても手首痛でお悩みの方がいれば、一度、弁護士に相談されるとよいと思います。

     

    ぜひ当事務所の交通事故無料電話相談・無料メール相談をご利用ください