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  • 労働条件と就業条件。把握する、把握させるために重要なことは?
  • 労働条件と就業条件。把握する、把握させるために重要なことは?
    ほっかい法律事務所
    種田 紘志

    昨今、時間外労働や過労など労働に関する問題が取り上げられることが多いですが、労働条件に関するトラブルも増加の一歩をたどっています。

     

    雇用関係は大きく分けて、「労働者(働く側)」と「使用者(働かせる側)」に分かれます。

     

    そこで早速皆様にご質問です。

    「労働者の方、ご自身の労働条件をきちんと把握されていますか?」

    「使用者の方、労働者に対して労働条件を把握させていますか?」

     

    今回は労働するにあたりとても重要になる労働条件やこれを定める就業規則についてのお話です。

    労働者の方、使用者の方それぞれが労働条件をしっかりと把握する、把握させるにはどうすべきか、労働条件の詳細を定める規則である就業規則とはどのようなものかについてご説明していきます。

     

    労働条件を把握する、把握させるために重要なこと

    雇用契約を締結しようとする際には、使用者は、労働者に対し、賃金や労働時間などを明示する義務があるとされています。

     

    ただし、これらの事項や、就業場所、労働契約の期限の定めの有無などといった重要な事項は、「書面の交付」によって労働者に対して明示しなくてはらないとされています。

     

    実務上、この書面は以下の名称となっているケースが多いです。

    ・「雇用条件通知書」
    ・「雇用契約書」または
    ・「就業規則」

     

    しかし、中にはこれらの書面が存在しない場合、口約束のみで働いてもらっている場合が一定数存在しているのが実情です。

     

    そして、経験上ですが紛争が生じてしまった労働関係では、これらの書面の交付がない場合が比較的多いように思います。

     

    労働条件は必ず書面による交付を行うことが大切

    上記のように書面の交付がない場合、実際の労働条件はどのようなものかというのがかなり不明確になってしまい、ご相談をいただいた場合でも実情を客観的に把握することが難しくなってしまうという問題も発生してしまいます。

     

    このような状況は、労使双方にとって好ましい状況とはいえません。

     

    書面の交付をしなくても大丈夫、あるいはもらわなくても大丈夫と思わず、後々の紛争の種とならないように、

    ・書面の交付を受けていない労働者の方は呈示をしてもらう

    ・書面の交付を行っていない使用者の方は呈示をする

    という点が重要です(使用者の方にとってはコンプライアンスの観点からも重要なことであると思います)。

     

    労働条件を定める「就業規則」について

    次に労働条件の詳細を定める規則である「就業規則」についてご説明したいと思います。

     

    常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則の作成が労働基準法上の義務とされております。

    この就業規則においては、賃金や労働時間等を内容とすることが求められています。

    したがって、10人以上の労働者がいる企業においては、個別的に締結する労働契約の他に、就業規則に記載のある事項も労働条件の内容となると言えます。

    この点は使用者たる企業からすれば、多くの従業員について、統一的な運用ができるというメリットがあると思われます。

    (なお、労働者が10人未満の企業において就業規則を作成することは問題ありません。)

     

    なお、労働契約と就業規則において、労働条件が食い違っている場合、特に、就業規則で定めている条件よりも悪い労働条件が契約上定められてしまっている場合はの個別の労働契約(の悪く定められている部分)は無効なものとされます。

     

    例を挙げますと、労働契約において基本給が14万円となっており、就業規則上は15万円と定められているような場合には労働契約が無効となりますので、基本給は15万円となります。

     

    就業規則が有効となる条件

    さて、この就業規則ですが、ただ単に企業が定めておけば良いというものではありません。

     

    この就業規則は以下のような場合に初めて有効となります。

    ① その内容が合理的であり、かつ

    ② 作成した就業規則を労働者に対して周知をしている

     

    このうち、②の「周知」については、労働者が知ろうと思えば知り得る状況にあることを指します(実質的周知といいます。)。

     

    一般的な例で言うと、社内のパソコンからアクセスできるようにしてあったり、会社の一部に備え付けており、それを全体に回覧しているといった事情があれば周知はなされていると考えられているようです。

     

    他方、社長室の金庫の中といったところに保管されているようでは、周知はなされているとは言えないと思われます。残念ながらこのようなケースも一定数存在しているところです。

     

    仮に周知がなされている就業規則があれば、思いも寄らぬご自身の労働条件が定められている可能性があります。

    ご自身の労働条件に不安があるときは、是非一度就業規則の確認をお勧めいたします。

     

    また、就業規則を作ったからこれで大丈夫だと考えてしまい、実は保管は他の従業員の見えないところにしていたという企業の方がいらっしゃいましたら、早急に周知をしておいた方がよろしいかと思います。

     

    さらに、状況によっては就業規則の変更が必要となるケースもあります。

    就業規則の変更については「就業規則の変更は必要?就業規則と労働条件の関係」でも詳しくご説明していますので、ぜひこの記事をあわせてご覧ください。

     

    労働条件などの労働問題でお困りの方は当事務所までご相談を

    労働条件は労働者の方と使用者の方どちらにとっても労働する上で重要な約束事です。

     

    しかし、両者が労働条件をしっかりと把握していないことによってトラブルが起きやすい部分でもありますので、書面で交付するなどを徹底することが両者がしっかりと労働条件を把握しトラブルを防ぐ重要なポイントとなります。

     

    今一度、ご自身の労働条件がどうであるか、労働条件を労働者に明示しているかを振り返ってみてはいかがでしょうか。

     

    私たちほっかい法律事務所では労働問題に対する無料相談を承っています。

    労働者側だけでなく使用者側の労働問題のご相談も受け付けておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。