人身傷害保険・搭乗者傷害保険・弁護士費用特約の利用法

こちらのページでは,ほっかい法律事務所の弁護士が,交通事故に遭った場合における自分や家族の保険(人身傷害保険,搭乗者傷害保険,弁護士費用特約)の利用法について解説しております。
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交通事故に遭った場合,自分や家族の保険からも保険金を受け取れるの?

ご自分やご家族の自動車保険から保険金を受け取ることを検討しましょう

交通事故の被害に遭うと、加害者に損害賠償を支払ってもらうことを考えるのが普通ですし、事故後には相手の保険会社とばかり話をすることになるので見落としがちなのですが、多くの交通事故では,被害者ご本人やご家族の自動車保険から保険金の支払いを受けることもできます。

自動車保険には多くの種類があるのですが、現在は、標準的な自動車保険であれば、「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」という名前の保険がセットになっています(統計では、このような保険の普及率は70%を超えているそうです。)。

これらの人身傷害保険や搭乗者傷害保険に加入していれば、交通事故による怪我について、その治療費、入院時の諸雑費、入通院による慰謝料、休業損害、後遺障害による慰謝料、逸失利益といった名目で、ご自分やご家族の自動車保険から保険金を受け取ることができます。

「人身傷害保険」は、補償対象となる方が自動車の事故に遭ったときに(車に乗っているときでも、歩行中のときでも構いません。)、支払われる保険であり、ここでの補償対象には、保険契約者ご本人はもちろんのこと、ご家族も補償対象となっていることが多いです。

この保険は、保険契約者以外のご家族の事故にも適用されますし、契約車両以外の自動車に乗っているときの事故にも適用されますので、さまざまなケースで活躍することになります。

また、「搭乗者傷害保険」は、契約車両に搭乗していて交通事故に遭って怪我をした方に対して支払われる保険です。搭乗者というと対象は同乗者だけに限られるようにも読めますが、運転者ご本人の怪我にも適用されます。

ただし、「人身傷害保険」の方が適用される事故の範囲が広いので、「人身傷害保険」の適用されない同乗者が怪我をされたような場面でないと活躍の場は少ないかもしれません。

これらの保険には、過失相殺が適用されないので、被害者にも過失があるようなケースでは、相手の任意保険からの保険金だけでなく、人身傷害保険などを利用することにより、より多額の賠償金を手に入れることができることがあります。

また、これらの保険は、交通事故の相手方のいない自損事故にも適用されます。事故の相手が任意保険に入っていない場合はもちろんですが、自損事故のように相手の任意保険が使えない場合には、人身傷害保険などの保険以外から保険金を受け取ることはできないので、これらの保険が特に活躍することになります。

弁護士費用特約を使って、弁護士に依頼することも検討しましょう

さらに、ご自分やご家族の自動車保険に「弁護士費用特約」がついている場合には、弁護士費用を保険会社が負担してくれる上に、依頼すべき弁護士が決まっていないときには、交通事故に通じた弁護士を紹介してもらうこともできます。

多くの保険会社の保険では、「弁護士費用特約」を利用して、弁護士費用の支払いをしたとしても、それだけで保険の等級が下がることはなく、月々の保険料が高くなるということはありませんので、「弁護士費用特約」がある場合には、積極的な利用をお勧めします。

もっとも、過失相殺が問題となるケースでは、交通事故の被害者であっても、加害者に対して、一部の損害賠償をしなければなりません。例えば、過失割合が8(加害者)対2(被害者)のケースでは、被害者にも2割の過失があるので、加害者に生じた損害について、その2割の損害賠償義務を負うことになります。

このようなケースで、この2割の損害賠償の支払いに被害者自身の任意保険を使うと、それが理由で保険の等級が下がってしまい、保険料の支払いを増えることになります。この場合には、「弁護士費用特約」の利用の有無とは関係なく、保険の等級が下がることになります。

ときどき「弁護士費用特約を使っても等級は上がらないと聞いていたのに、等級が上がってしまった!おかしい!」という相談をお聞きすることがありますが、これは「弁護士費用特約」のほかに加害者に対する損害賠償に任意保険を使ったために、保険の等級が下がっているので、注意が必要です。

交通事故に遭った場合は、ご自分やご家族の保険会社に連絡を取り、保険金の支払いを求める事ができるケースであるのかを確認し、保険金の支払いを受けられるケースであれば、その保険を使うことも積極的に検討すべきでしょう。

相手の任意保険と併用して利用しましょう

人身傷害保険などでは、支払われるべき保険金の計算方法が保険約款で定められており、このような基準に使って計算した金額以上の保険金の支払を受けることはできないという難点があります。

一般的に、人身傷害保険などで使われる保険金の計算基準は、民事裁判での損害賠償の計算基準よりも低く設定されているので、人身傷害保険などの保険金だけでは、請求できる損害額全額の支払を受け取ることはできません。

相手の任意保険を使うことができるケースであれば、相手の任意保険とご自分の人身傷害保険などを併用して保険金の支払いを受けるのがベストです。

なお、人身傷害保険については、相手の任意保険からの支払も受けられるケースでは、人身傷害保険からの支払を先に受けるのか、相手の任意保険からの支払を先に受けるのかによって、最終的に受け取ることができる金額が異なり、人身傷害保険からの支払を先に受けた方が最終的に手にできる金額は大きくなると説明されることがあります。

しかし、この問題は、裁判上でも決着のついていない問題であり、また、保険会社によっても扱いのルールが異なることから、人身傷害保険から先に支払を受けた方が有利だと一概に言うことはできませんので、注意が必要です。

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