ブログ

  •  > 
  •  > 
  • 【交通事故】人身傷害補償保険受領後に過失相殺が問題なる場合の注意点
  • 【交通事故】人身傷害補償保険受領後に過失相殺が問題なる場合の注意点
    堀江・大崎・綱森法律事務所
    大崎 康二

    被害者なのに自分の保険を使って治療費等の支払をしなければならなくなることがあります

    交通事故の被害に遭って人身損害が発生した場合,多くのケースでは事故の加害者の契約する任意保険が治療費や休業損害等の支払を対応することになります。

    しかし,加害者自身が事故の内容を認めなかったり,争ってきた場合には,加害者の任意保険が支払対応を行なわない(行えない)ことがあり,その結果,事故の被害者であるにもかかわらず,自身の契約する自動車保険の人身傷害補償保険を利用して,治療費等の支払対応をしなければならなくなることがあります。

    このような場合は,事故の被害者としては,治療の終了(症状固定)までは,自分の保険で治療費や休業損害の対応を行ない,治療終了後に改めて,事故の相手方の保険会社に損害賠償の請求をすることになります。

    人身傷害補償保険の受領額は損害賠償額から控除されます

    この相手方の保険会社に対して損害賠償の請求をする場合には,「損益相殺」といって,受領済みの人身傷害補償保険の金額を差し引いた金額の損害賠償のみが認められることになります。

    例えば,交通事故によって裁判基準で計算して200万円の損害が発生していて,人身傷害補償保険から100万円を受け取った場合,相手の保険会社に請求できる金額は200万円-100万円=100万円となります。

    過失相殺が問題になる場合でも,人身傷害補償保険があれば相手方への損害賠償額には影響がありません

    上の例は過失相殺が問題にならない例ですが,過失相殺が問題になるケースにおける損益相殺の計算方法については,どのように考えたらよいのでしょうか。

    ここは以前は保険約款で明確に規定されていないため,考え方が分かれていた時代もありましたが,平成24年2月に最高裁判決が出たことで,少なくとも実務上の扱いについては論争が終結し,各保険会社の保険約款もこれに沿った内容に変更されています。

    最高裁が採用した考え方は,「訴訟基準差額説」と呼ばれるもので,裁判基準の損害額を前提に,受領済みの人身傷害補償保険の全額を損害額から控除するのではなく,過失相殺によって減額される金額を除いた金額を控除するという考え方です。

    具体例で説明をすると,上記の例で過失割合が80(加害者):20(被害者)だった場合,過失相殺後の損害額は200万円×8割=160万円となりますが,損益相殺については,受領した人身傷害補償保険100万円を全額控除するのではなく,ここから過失相殺によって減額された40万円を差し引いた60万円のみ控除することになります。

    この結果,相手方の保険会社への請求額は,160万円-60万円=100万円となり,過失相殺がなかった場合と同じ金額を請求することができることになります。

    相手の保険会社との交渉の際には計算方法に注意を!!

    このように人身傷害補償保険があれば,過失相殺が問題になる場面であっても,過失相殺がされない金額と同額の損害賠償を受けることできます。

    その意味では,人身障害補償保険のメリットは大きいので,自動車保険の契約をする際には,人身傷害補償保険の加入を積極的に検討すべきだと思います。

    また,人身傷害補償保険自体は,これを利用しても「ノーカウント事故」として保険等級が下がりませんので(人身傷害補償保険と同時に対人賠償や対物賠償,車両保険などを使えば,その分等級は下がります),過失相殺が問題になる事故の場合には積極的に人身傷害補償保険を利用していくべきといえます。

    このように被害者にとっては非常にメリットの大きい人身傷害補償保険ですが,加害者側の保険会社と交渉をしていると稀にではありますが,「訴訟基準差額説」の理解がなく,過失相殺後の賠償額から人身傷害補償保険を全額控除しようとする担当者に当たることもあります。

    上記の例では,200万円×8割=160万円から100万円全額を控除することを前提に,60万円の支払を提示してくることがあるということです。このような計算をすると本来受け取ることができる賠償額が40万円も減らされることになりますので,十分に注意が必要です。

    困ったらすぐに弁護士に相談を

    このように1つの交通事故遭うと,そもそも適正な賠償額がいくらなのかという点のみでなく,人身傷害補償保険を使うべきなのか,これを使ったとして賠償額がいくらになるのかという点など被害者自身が種々の選択や判断を迫られることになります。

    交通事故に遭ったらまずは弁護士に相談をという意識が大事です。