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  • 就業規則の変更は必要?就業規則と労働条件の関係
  • 就業規則の変更は必要?就業規則と労働条件の関係
    ほっかい法律事務所
    種田 紘志

    「労働条件と就業条件。把握する、把握させるために重要なことは?」の記事で多数の人員を抱える企業の中で統一的な運用をするための基準である、就業規則とはどのようなものか、また、就業規則を把握すること、把握させることの重要性についてご説明をさせていただきました。

     

    就業規則を把握すること・させることは、労働上のトラブルを未然に防ぐために有益な方法ですが、より適切な内容にすべく就業規則を変更することによってもトラブルを防ぐことが可能になります。

     

    今回は、その就業規則の変更の必要性や、就業規則の変更により労働条件が変更となる場面についてご説明したいと思います。

     

    就業規則の変更が必要な背景

    全国の裁判所における労働関係訴訟の新受件数は増加の一途を辿っており、平成17年度に2446件であったのが、平成27年度には3389件にまで増えています。10年間に1.4倍程度のペースで増えていることになります。

     

    背景には、個人の権利意識の高まりや、長期的な経済の低迷による雇用の不安定化であったり、労使間の信頼関係化の薄弱化というものがある一方で、各種広告による特に時間外手当請求の増加というものも要因になっているのではないかと個人的には思います。

     

    このような状況において、労使紛争が発生した場合、ある程度大きい規模の企業であれば別ですが、中小企業にとっては死活問題になることがありえます。

    特に時間外手当の請求に関しては、支払額がそれなりの規模になることが多いこと、さらには一人の請求によって他の社員の時間外手当の請求も誘発しかねないことから、段階的に使用者側の負担が増えていくケースが散見されます。

     

    正しい就業規則は会社と社員の信頼関係の維持につながる

    このような状況に対する対処としては、抽象的には使用者と労働者との間の信頼関係を構築するということも大事ですが、具体的な対処としては、例えば、時間外労働の発生が避けられない勤務シフトを採用している会社であれば、そのシフトを見直したり、そのシフトを前提に時間外労働の発生を抑えるような労働時間制度を導入し、それに伴って就業規則の変更手続を行なうということが考えられます。

     

    特に労働時間制度については、労働基準法において、いくつものバリエーションが決められており、その制度を活用することで会社の勤務シフト制度にもっとも合った労働時間制を導入し、不要な時間外労働の発生を抑えることができ、将来労働紛争を発生させないようにリスクを軽減することができます。

     

    また、労働基準法に則した正しい就業規則を作成しておくということは、会社と社員の信頼関係を維持する上でも重要なことだと思いますし、コンプライアンスの観点からも重要といえます。

     

    就業規則を変更するには

    さて、労働条件とは、使用者・労働者間の雇用契約の詳細を定めるものですが、これを変更するには、契約内容の変更である以上、両当事者による合意が大原則となります。

    もっとも、一定の場合には、個別的に合意が無くとも就業規則を変更することにより、労働条件を変更することが可能となっています。

    その一定の場合とは、法律上、

    「変更後の就業規則を労働者に周知させ」

    かつ、

    「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」

    に可能であるとされています。

    前半の部分(周知)は「労働条件と就業条件。把握する、把握させるために重要なことは?」でもご説明した点ですし、表現も簡易ではあるのですが、特にわかりにくいのが後半の部分です。

    後半の部分は前掲記事でも記載したように「合理性」の視点を挙げているのですが、その要素として4つの事項が挙げられています。

     

    就業規則の変更を検討する上での4つの要素

    要素ということは、4つの事項を総合的に検討する、ということを指しますので、たとえば交渉が無いからという理由のみで合理性が認められることはない、といったことはありません(もちろん合理性を否定する大きな材料にはなります)。

    以下、各事項について解説をします。

    ①労働者の受ける不利益の程度

    労働者の受ける不利益があまりにも大きいような場合だと、急激に生活が変化(悪化)することになるため、合理性がない方に傾く事情となります。

     

    他方で、経過措置(段階的引き下げなど)、代償措置(片方では不利益となるものの、別の面で利益になる措置を講ずる)などが講じられているとすると、不利益が小さくなるように配慮がされていると考えられておりますので、合理性は肯定される方に傾きやすくなります。

     

    ②労働条件の変更の必要性

    この点については、会社がなぜ就業規則の変更をしなくてはならなかったのか、という視点が重要となりますが、特に、賃金や退職金などの重要な権利については、会社側に高度の必要性が認められることが必要という判断が裁判所にてなされる傾向にあります。

     

    ③就業規則の内容の相当性

    これは、変更後の就業規則の内容それ自体が相当かどうか、また、同業他社と比較した場合はどうかといった視点で検討されることとなります。

     

    ④交渉の状況

    労働組合との交渉が念頭に置かれておりますが、多数組合が必ずしも一部の少数者の利益を代表していない事案もあったことから、どこまでこの要素を重視するかという点について、統一的な運用がなされているわけではありません。

     

    就業規則の変更でお困りの方は当事務所までご相談を

    今回ご説明したように、就業規則の変更は、検討要素が多岐にわたりますので、その合理性の検討は、事案毎に異なりますし、詳細に行う必要があります。

    就業規則による(知らないうちに)自分の労働条件が不利益に変更されていたとき、逆に会社の就業規則を変更するときなどには、是非一度ご相談ください。

    私たちほっかい法律事務所では労働問題に対する無料相談を承っています。

    労働者側だけでなく使用者側の労働問題のご相談も受け付けておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。