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労働者性とは?労働者の判断基準と業務委託との区別 ほっかい法律事務所種田 紘志労働者を保護するための労働基準法。
その保護を受けるためには、この法律で規定される「労働者」と認められる必要があります。
しかし近年、従事する就労形態が多様化する中で、その人が労働者であるかどうか(労働者性があるかないか)の定義が問題になるケースが増えてきています。
今回は、労働基準法の適用を受ける「労働者」とはどのような基準で決められるのか?という点についてご説明させていただきます。
労働者に当たるとこれだけの違いがある
労働者に当たるか否かというのは、実生活上非常に大きな意味を持ちます。
労働者に当たる場合、賃金や労働時間に関する労働基準法の適用を受けることになりますので、残業代に関する規制も及ぶことになります。
したがって、契約書の文言上残業代が発生しない場合でも、残業代は実は請求できる、とい言う場合があるのです。
残業代に関する規制や判例については、当事務所の他のコラムで詳しく解説しているので、合わせてご参照ください。
このような問題は、契約上「業務委託」となっているような場合に多く発生するものです。
労働者性とは~労働者を判断するための基準〜
では具体的にどのように労働者であることが判断がされるのでしょうか。
労働者性は、契約書の名称から判断されるものではありません。
契約書上、業務委託契約となっているから問題ないんだ、という反論が考えられなくもありませんが、それでは脱法的行為がいくらでもできてしまいます。
労働基準法にいう労働者とは、使用者から使用をされ、労務に対して賃金を支払われる者とされています。
要約すると「使用」されて「賃金」を支払われているかが基準になります。
この2つの基準は「使用従属性」と呼ばれています。
使用されているかどうか
まず、「使用」されているかどうかについては、以下の点が考慮要素と考えられています。
① 仕事の依頼に対する諾否の自由があるか
仕事を受ける受けないを自由に決めることができると言う場合ですと、一般的な使用関係とは異なると思われますので、使用性は弱くなります。
② 指揮監督の有無
指揮命令や指示を受けずに自由に業務の遂行ができる場合、使用性は弱くなります。
③ 勤務時間や場所の拘束があるか
これも②と同様です。
④ 他人による替えが効くか
替えが効くとなってしまいますと、一般的な使用関係(会社における労働者の配置)とは異なりますので、使用性は弱くなります。
賃金を支払われているかどうか
続いて、「賃金」性については、「報酬の労務対償性」、つまり労務との対応関係が重要です。
すなわち、提供した労務の長さに応じて報酬が決まるような場合には、一般的な雇用関係と近いものとなります。
その他に考慮される要素
上記の要素のほか、下記の項目も要素として考慮されます。
①事業者性(機械をどちらが負担するか、作業に比較して報酬が高いかなど)
②専属性の程度(他社の業務が制約されているか)
③源泉徴収、社会保険料負担の有無これらは労働者性を考える上で強い要素ではありませんので、補強要素と考えることもあります。
労働者性の問題はご自身だけで判断しないで専門家の意見を
上記のように、労働者性は多くの要素が絡み合った上で判断なされるものですので、裁判例等は非常に多く、肯定例・否定例いずれも多数存在します。
そのため、契約書上は業務委託とされているけど、もしかしたら残業代の請求ができるのかも・・・?とお考えの方は、一度弁護士に相談を行い、専門家の意見を聞くことをおすすめします。
当法律事務所は無料で何度でもご相談いただけますので、お悩みの方は是非一度お問い合わせください。
当事務所のブログでは他にも、法律問題に関するコラムを多くご紹介していますので、こちらも参考にしてください。