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  • 相続における「寄与分」とは?認められる場合や算定方法
  • 相続における「寄与分」とは?認められる場合や算定方法
    ほっかい法律事務所
    横山 尚幸
    ※横山尚幸弁護士は令和3年6月30日をもって当事務所を退所いたしました。本記事は当事務所在籍中に執筆したものです。

    遺産相続で相続人が複数いる場合、特定の相続人が親の営む自営業に協力をしていたり、親の療養看護に当たっていることがあると思います。

    この場合、当該相続人が他の相続人と同額の遺産を受け取るとすれば、相続人間で不公平が生じますよね。

    遺産分割協議の中で、当該相続人の労力を考慮し、遺産分割方法を決めることができるのが一番望ましいですが、他の相続人にとっては、自分の取り分が減ることになるため、全員の納得が得ることは難しく、トラブルになりがちです。

    今回は、生前の被相続人に対する寄与で損をしないために、どういった条件だと認められるか、どのくらいの額を受け取れるかの目安として算定方法についてお話します。

     

    相続における寄与分とはどういった制度?

    被相続人に子が複数いる場合であっても、前記のように、特定の相続人のみが介護をしていることも多いと思います(他の相続人は,離れた場所で生活している等)。

    この場合、遺産分割において、盆と正月だけ顔を出していた相続人と24時間介護した相続人で、同じ割合で遺産分割するのは不公平と感じますよね。

    このような場合に、共同相続人間の公平を図るために定められた制度が、「寄与分」です。

    被相続人の財産の維持又は増加に特別な寄与をした相続人がいるときには、相続財産から当該相続人の寄与分を控除したものを相続財産とみなして、相続分を算定するという制度を規定しております。

     

    相続人が寄与分を受け取るための条件とは

    相続人自身の行為について、寄与分が認められるには、以下の条件に該当することが必要です。

    (1)当該寄与行為が、被相続人と相続人の身分関係に基づき通常期待されるような程度を超える貢献(「特別の寄与」といいます)として評価されることが必要

    (2)当該寄与行為によって被相続人の遺産が維持又は増加したことが必要(経済上の効果のない精神的な援助・協力は考慮されないということです)

     

    寄与分に関わる相談で多いのが、特定の相続人が「私のみが看護をしていた」「私のみが介護をしていた」との主張ですが、話を伺ってみると、寄与分が認められない程度の看護・介護であることが多い気がします。

    寄与分の根拠として療養看護(介護を含む)を主張する場合、お見舞いや自宅を訪問しての声掛け、食事の準備、入院中の洗濯や食事介助等は、親族であれば当然なす「配慮」と評価され、「特別の寄与」とまで評価されないことも多いです。

     

    例えば、病院や施設から相続人以外の介助を受付けないとお願いされたという特別の事情がある場合であっても(「特別の寄与」評価できる場合であっても)、謝礼や実費が支給されていたか否か、どの程度の期間が継続したか(数ヶ月程度は要求される)、どの程度の時間を費やしていたか等が問題となります。

    寄与分の根拠として療養看護(介護)を主張する場合には、➀当該行為の必要性、②行為の特別性、③無償性、④継続性、⑤専従性などを考慮する必要があるということです。

     

    他には、一般に「家業の手伝いをしていた」(家業従事型)「被相続人に対し財産的な援助をしていた」(金銭等出資型)等の事情がある場合には、寄与分の問題が絡みます。

    家事従事型の場合、第三者に有償で委任すべき程度の行為を無償(又はこれに近い状態)で従事していた場合には、認められる可能性があります。

    相続人の行為で、被相続人が代表を務める法人の財産が増加したという場合や、きちんと給与をもらっていたという場合には難しいことが多いです。

    金銭等出資型については、提供した財産の額や内容が考慮され、贈り物等の儀礼的な給付や子が親に送金する小遣いである場合には、否定されることが多いです。

    被相続人施設入居費用を負担したり、借金の肩代わりをした場合には、認められる可能性も出てきます。

     

    相続人が寄与分を認められたら、どのくらい貰える?算定方法とは

    寄与分の算定方法は次のとおりです。

    1. 被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から寄与分額を控除した財産を、相続財産とみなします(以下、「みなし相続財産」といいます)。

    2. みなし相続財産の価額に、各相続人の相続分を乗じます。寄与分を主張できない相続人は、ここで算定された価額が具体的相続分となります。

    3. 寄与分を主張できる相続人については、2で算定した価額に、寄与分を加えた価額が具体的相続分となります。

     

    では実際に、具体例で考えてみましょう。

    被相続人Xは7000万円の財産を残して死亡した。
    Xの相続人は妻Y、長男A、長女B、二女Cである。
    Xは生前農業を営んでおり、長男AはXの農業の手伝いをしていた。
    長男Aには1000万円の寄与分が認められる。

     

    この場合、各相続人の具体的相続分は次のとおりとなります。

    1. みなし相続財産を計算する

    7000万円-1000万円=6000万円

     

    2. 各相続人の相続分額を計算する
    (相続分は、妻Yが2分の1、長男A、長女B、二女Cが6分の1となります。)

    妻 X :6000万円×1/2=3000万円

    長男A:6000万円×1/6=1000万円

    長女B:6000万円×1/6=1000万円

    二女C:6000万円×1/6=1000万円

    寄与分のない妻X、長女B、二女Cの相続分額は、これで確定します。

     

    3. 寄与分のある共同相続人の相続分額を計算する

    長男A:1000万円+1000万円=2000万円

     

    この計算だけをみると簡単だと思われるかもしれません。

    確かに事例のように寄与分の金額が明らかであれば、計算をすることは簡単です。

    しかし寄与行為の典型例である家業への従事、療養看護がいくらであるか金額をつけることは大変困難であると思われます。

    の点は贈与や遺贈の金額が明確となっている特別受益の場合とも異なるところかと思います。

     

    相続人による寄与分問題は複雑!専門家にご相談を

    寄与分は共同相続人の協議で決定することができますが、協議が整わないときには家事調停を行うしかありません。

    さらに調停不成立となった場合には、審判により決定されることになります。

    寄与分の問題は内容・手続き共に複雑なものとなっておりますので、一度専門家の意見を聞くことをお勧めします。

    その際は当事務所の遺産相続無料相談を活用していただけると幸いです。

    お困りの方はお気軽にご相談ください。