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  • 交通事故の賠償請求の進め方と事件対応の流れについて
  • 交通事故の賠償請求の進め方と事件対応の流れについて
    ほっかい法律事務所
    横山 尚幸
    ※横山尚幸弁護士は令和3年6月30日をもって当事務所を退所いたしました。本記事は当事務所在籍中に執筆したものです。

    皆さんは、交通事故事案(人身事故)で弁護士に依頼すると、どんな形で賠償請求や事件対応が進められ、どういう形で終結し、賠償金を受領することになるのかという点についてご存知でしょうか。

    実際に交通事故被害に遭われたご経験があり、しかもその際に弁護士をご利用になられた方でない限りなかなかご存知ないのではないかと思います。

    そこで今回は、弁護士に交通事故事案についてご相談・ご依頼いただいた場合の賠償請求や事件対応の流れと、賠償請求できる対象などについてお話いたします。

     

    交通事故の賠償請求と事件対応の流れ

    まず、交通事故に遭ってから、賠償請求するまでの流れを事件対応の流れを踏まえながら確認していきましょう。

    1.交通事故直後の段階

    損害賠償の請求項目は後述しますが、治療費や慰謝料をはじめ、人損(お怪我に関する損害賠償)については,通院が終了しなければ賠償額が確定しません。

    そのため、事故直後は,賠償額(総額)に関する交渉をする段階にはありません。

    この段階でご相談頂いた場合は、治療終了後の示談交渉の一般的な流れや通院と損害賠償の関係、通院時の留意点(通院の頻度、画像診断の大切さ、過失相殺が想定される場合の健康保険の利用、人身事故と物損事故の違い等、詳しくはこちらのブログをご確認下さい。)を説明させて頂くことになります。

    事故直後の時点では、弁護士受任後の賠償額増額の程度が判明しないため、弁護士に依頼することのメリット(弁護士費用負担額との差)を判断できない場合が多いです。

    もっとも、弁護士費用特約に加入されている場合には、「今後一切保険会社との対応等に煩わされたくないし、いずれにしても依頼しようと思っていたので…」というような理由でご依頼を頂く場合もあります。

     

    2.治療中~治療終了間近の段階

    保険会社は、被害者ご本人からの聞き取りや病院から診療情報の提供を受けることで、治療の進捗状況等を確認します。

    もっとも、診療情報が個人情報であるため、病院は本人の同意がない限り、保険会社に診療情報を提供することができません。

    そのため、治療開始後少し時間が経つと、保険会社より、保険会社が医療機関より診療情報の提供を受けるための「同意書」の作成を求められます。

     

    治療が順調に進み,痛み等症状の改善とともに治療が終了する(保険会社の対応が終了する)場合には,特に問題は生じません。下記3に進むことになります。

     

    これに対し、一定期間治療を受けているにもかかわらず、痛み等症状の残存する場合には、保険会社との交渉が必要な場合が出てきます。

     

    被害者個々人によって差があるのは当然ですが、怪我の内容によって、目安となる治療期間があります。

    そのため、まだ痛み等の症状が残っている場合でも、保険会社から、「そろそろ治療終了しませんか。」「保険会社が治療費支払えるのは、〇月までになりそうです。」等の治療費の打ち切りを打診されることがあります。

     

    治療継続を希望する場合には、保険会社との間で、被害者ご本人に残存する症状や主治医の説明(治療継続の必要性)に基づく、治療継続の交渉が必要となります。

    治療費打ち切りの打診を受けた際の詳しい対応については、「交通事故で治療費が打ち切りになった場合の保険会社への対応について。」でご紹介しております。

     

    治療費の打ち切りが打診されたことを契機に、ご相談に来られる方は多いです。

    この時点でも損害額(総額)を算定することはできませんが、事故の態様(正面衝突だったのか、追突事故だったのか、事故時の速度など)、これまでの治療期間や診断内容(診断名,画像等他覚所見の有無)に基づく後遺障害認定の可能性等から、今後の見通しについて、ある程度詳細な説明ができる方が多いかと思います。

     

    この時点でご依頼頂いた場合には、治療継続の交渉から開始し、治療終了後は下記3②の流れに移行することになります。

     

    3.賠償請求は治療終了後からスタート

    賠償請求は治療終了後から本格的な行動を起こしていくことになります。

    痛み等の症状が残った場合と残らなかった場合で進め方が異なりますので、場合を分けてご説明していきましょう。

     

    ① 痛み等の症状が残らなかった場合

    痛み等の症状が残らない状態(いわゆる「治癒」)まで回復された方については、治療終了後、裁判所の採用する基準に基づき、治療期間や治療日数に応じて慰謝料等を含めた賠償額(総額)を算定することができます。

     

    痛み等の症状が残らない状態まで通院できた方は、通院期間中、保険会社の対応に強い不満を持たなかった方も多く、保険会社から賠償額の提案を受けて初めて、提案額の相当性を確認するために相談に来られる方も多いです。

     

    保険会社からの提案を受けた状態で相談に来られる場合、弁護士介入により金銭的メリットがあるかを算出することができます。

    弁護士費用特約に加入していない方についても、弁護士介入後の賠償金増加額と必要となる弁護士費用を比較することができるので、交渉に要する時間、金銭的メリットや交渉等手続に要する時間を考慮した上で、弁護士に依頼するか否か判断して頂きます。

     

    ご依頼頂いた後は、弁護士が窓口となり、保険会社の担当者と交渉をします。

    交通事故証明書や診断書・レセプト等の事故に関する資料は、相手方保険会社より写しを頂けることが多いので、依頼時に資料が手元にない場合でも交渉を進めることが可能です。

    交渉の進捗状況等は、弁護士より適宜ご報告させて頂くことになります。

    交渉の結果、相手方と金額面で折り合いがつけばそこで示談成立となりますが、折り合いがつかない場合には、紛争処理センターによる示談斡旋手続や訴訟手続に移行することになります。

    別手続に移行する場合には、改めて、委任契約を締結することが一般的です。

     

    保険会社との交渉は、概ね1~2ヶ月程度で終了します。

    1~2ヶ月程度で示談できるか示談できないか判断できることが多いです。

     

    ② 痛み等の症状が残った場合 (交通事故による後遺障害認定についてもご確認下さい。)

    痛み等の症状が残った状態で治療が終了した場合には、残存する症状等について後遺障害等級が認定されるか、申請を行うことになります。

     

    後遺障害等級の認定手続は、相手方保険会社を通じて行う方法と被害者自身が申立をする方法(代理人となった弁護士が行う)があります。

    損害保険料率算出機構という専門機関が審査を行います。

    審査に要する期間は様々であり、短くて1ヶ月程度、長ければ半年以上かかるケースもあります。

    むち打ち等による痛み・痺れが残存したというようなケースであれば、1ヶ月~2ヶ月程度で結論が出るという印象があります。

     

    審査の結果、「後遺障害等級」(※1級から14級まであり,番号が若いほど重度とされています。)が認定されれば、等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益(後遺症が残らなければ将来の勤労によって得られたはずの利益)も請求できるようになります。

    後遺障害等級が認定されない場合には、異議申立を行うか否かを検討することになります。

     

    弁護士が異議申立を行う際には、申立時とは異なる資料を提出できないか、審査時に見落としやすい事情を主張することができないか検討することになります。

     

    異議申立時に用意する資料としては、画像所見に対する医師の意見書があります。

    意見書を作成してもらうためには、レントゲン画像やCT画像が必要となりますが、画像所見が不足しているために、この時点で撮影してもらうこともあります(本来は、治療中に詳細な検査が実施されていることが望ましい)。

     

    異議申立を行うか否か検討する際に考慮要素となるのが、費用と時間です。

    医師の意見書は、放射線科医等、画像読影の専門家に行ってもらうことになりますが、外部機関に依頼するため、費用がかかります。

    加入されている弁護士費用特約によっては、対応して頂けることもありますが、弁護士費用特約で対応してもらえない場合には、費用が悩ましいポイントとなります。

    医師の意見書を作成してもった後、弁護士が異議申立書(後遺障害が認定されるべきだとの主張を記載した書面)を作成し、異議申立を行うことになります。

    審査の期間は、最初の審査よりも長いという印象があります。

     

    後遺障害等級に関する認定手続が終了した後、相手方保険会社との交渉に進むことになります。

    認定を受けた後遺障害等級を基準に金額を算定し、交渉を行う場合には、上記①の場合と同様、概ね1か月~2か月程度で、交渉が終了することになります。

    認定された後遺障害等級が重たく、賠償金額が多額となる場合には、保険会社の内部決済に要する時間が長くなるため、結果として、交渉に要する時間が長くなります。

     

    後遺障害等級が非該当と判断された場合でも、弁護士に依頼するメリットがございます。こちらをご確認下さい。交渉事案、訴訟事案いずれもございます。

     

    認定された後遺障害等級以上の等級を基準に賠償額を主張することも不可能ではありませんが、その場合には、相手方保険会社が示談に応じないことが見込めるので、訴訟により請求する必要があります。

     

    大まかな交通事故における賠償請求と事件対応の流れについてご説明してきました。

    お怪我を理由とする損害賠償の項目についてはこちらをご確認下さい。

     

    最後に交通事故における賠償請求の算定基準について、簡単に触れたいと思います。

    賠償額算定の基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準(弁護士基準)がございます。裁判基準が最も高い金額となります。

    裁判基準自体を調べることは、インターネットや書籍等で簡単にできますが、被害者本人が保険会社と交渉する場合に、裁判基準で算定した金額を伝えたとしても、「弁護士が介入した場合の基準なので」等、交渉に応じてもらえないと聞いたことがございます。

    そのような場合には、弁護士費用を踏まえた上で、ご依頼頂くか否かご検討頂くことになるかと思います。

     

    交通事故の賠償請求でお困りの方は弁護士にご相談を

    今回は、交通事故における賠償請求の流れや損害項目(概要)についてお話しました。

    今まさに、上記の賠償請求と事件対応の流れでお話した1~3のどこかの段階で、弁護士に相談するとどのような流れになるのか、また、どのようなものについて賠償請求ができるのか、といった疑問やお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

    ご自身、もしくはご家族が交通事故に遭われたお辛い状況の中で、治療や賠償請求についてまで考えるのは、精神的にも体力的にもとても厳しいものがあるかと思います。

    このような場合には、なるべく早めに弁護士へご相談することをお勧めいたします。

     

    当事務所でも交通事故における賠償請求など、交通事故に関する交通事故無料相談を実施しています。

    お困りの方は、お気軽にメールやお電話にて無料相談をご利用ください。